今回は、私が配信させていただいたメルマガに対する感想をご紹介します。
どんな内容かというと、「羽子板ボルトに発泡ウレタンを吹く」というものです。検索してもらえばすぐにわかると思いますが、羽子板ボルトは骨組みの時に使う金物です。
絵のように柱があって、梁を止める時に、羽子板ボルトという金物を使います。柱の中に穴を開けて、その中を金属のボルトが貫通する感じになるので、夏は熱くなり、冬は結露してしまう恐れがあります。そうならないように、発泡ウレタンをプシューッと吹くという人もいます。高気密・高断熱系の住宅会社さんだと、やる人は比較的多いかもしれません。
やって悪いことはないですが、やらないとダメなのかというと難しいところです。それをやらないと問題が起こるのかとか、寒くなったり暖かくなったりするのかというと、そういうわけではありません。一般的には、外壁があって、通気層があって、パネルが貼ってあって、羽子板ボルトがあるという感じなので、それによって夏は暑くなるとか、冬は寒くなるという風には言えないと思います。あくまでも室内の温熱環境に与える影響はないというのが事実かなという感じがします。
それでも、発泡ウレタンを吹く人はいます。実際に当社でも、発泡ウレタンは基礎断熱の時に使うので、もし余っていたら大工さんが吹いてくれることがあります。ただ、「絶対に吹いてね!」と無理強いしているわけではありません。高気密・高断熱系の会社の中には、それをやることが絶対に必要だと誇大アピールしちゃうところもあるらしいです。それについて西の巨匠に聞いてみましたが、自身の経験からして何の問題も起こらないだろうとのことでした。
理論的に考えても何も起こらないとは思いますが、世の中にはそういうことをやるべきだと言う方もいるみたいです。「そんなことに対して目くじらを立てなくてもいいじゃん!」と思う人もいるかもしれませんが、個人的には違和感があったので、そのことについてメルマガに書いたところ、以下の感想をいただきました。
「小暮社長様、いつも深く掘り下げて解説いただきありがとうございます。今回も細部ではありますが、小暮社長様の下記コメント”住宅会社の中には発泡ウレタンを羽子板 ボルトに吹付する事を凄い事のようにアピールする方もいるのですが、ここも不思議に感じます。”が凄く響きました。昨今の氾濫している建築系YouTuberに挑戦状を投げかけている様で痛快でもあります。少し前の通気と換気についてのメルマガも同様に感じました。近所の2か所で建売住宅が建設中なので、たまに進捗を見たりしておりますが あれ?と思う事がありました。どちらも****という名だった(防水シートと思われます)の上から胴縁らしき板(外壁用の板かもですが)を張り付けてあるのですが サッシ下部に接するところまでその板が伸びているのです。先日建築中の我が家の機密測定に立ち合いました。結果はC値=0.3でした。検査員の方も“よい数値だ”と感想を述べておられました。その際当方の現場監督から通気胴縁の施工について説明がありましたが半楕円型のすきま?が一定間隔で開いている胴縁を打ち付け、サッシの下部は数センチではありますが空間がありました。縦横への空気の通り道を確保するとの事でした。確か、縦胴縁の時はスキマを設けるのが鉄則と思っていたのですが… 上記の建売住宅の胴縁にはその様なすきま?はなくただの板です。素人なので単純に疑問が頭に浮かびましたが、この差は何なのだろうと。小生が間違った感覚なのか、その建売住宅が小生の考える住宅ではないのか不思議な感覚に襲われました。時間があればその建売住宅の進捗を見に行きたいと思ってます。【高性能な家が出来るのは良い事だけれども、生きている上での、過不足も感じないと、本当の有難さも解らないし、カプセルのような何も感じない場所にいる事は、かえって不健康ではないのか?】西の巨匠の仰る通りと共感しました。」
私のメルマガでは、「視野を広げましょう。」「視点を変えましょう。」「考えることも重要だけど、感じることも重要だ。」ということを言っています。今の人はYouTubeを見たり、私のメルマガを読んだり、プロしか読まないような建築雑誌を買って読んだりすることが勉強だというような風潮がありますが、思考ばかりしていると、素直に感じることがだんだんなくなってきてしまうと思います。
感じるべきところも考えるべきところも、人間には必ずあります。どっちかが上でも下でもまずいので、バランスは重要だと思います。それは住宅会社選びにおいても同じことが言えます。「この質問OK!」というところだけで住宅会社を選ぶ方法もあるし、インスタグラムみたいに感情だけで選ぶ方法もありますが、考えるべきところと感じるべきところのバランスを保ちながら業者選びや家づくりをしていかないと、なかなか難しいかと思います。
縦胴縁をやっていても、本当に棟換気まで通気しているかどうかわからない場合もあります。この方のようにエアホール胴縁をつければ空気が流れるとは思いますが、風というのは常に水平に吹いているわけではありません。そういうことを踏まえると、ダブル胴縁とか、網パネルというものを使って、どこでも流れていくようにする必要があると思います。
羽子板ボルトに発泡ウレタンを吹くことに対する違和感というのは、どんどん過剰になっていくということです。吹くことが悪いわけではないし、吹かなかったら室内環境に影響を及ぼすわけでもないですが、こういうことをどんどんやっていくと、コストが上がるかもしれないし、手間もかかるかもしれません。何でもG3、どこでもG3という感じになると、消費者の方は「G3じゃなきゃいけないんだ。」と思ってしまうはずです。
そうは言っても、G3は悪いわけではありません。G3にすれば絶対に夏は涼しくなるし、冬は暖かくなるから、保険としてやればいいということなら、私はいいと思います。でも、必ずしもそうなるわけではありません。だから、一種換気をつけなければいけない、G3じゃなければいけない、C値は0.2以下じゃなきゃいけないという風に、どんどん過剰になっていくわけです。
どこの工務店さんの家とは言いませんが、日中でもハニカムブラインドをずっと閉めて、外を見ずに暮らしている家には、違和感があります。そうするのも1つの方法なのかもしれませんが、もったいないなと思ってしまいます。人生は1度しかないからです。
私も58歳になって、若い時とはだんだん違う感覚になってきています。西の巨匠は70歳を超えたので、さらに違ってきていると思いますが、年を取ると若い時の感覚とは変わってくるし、変わりながら生きていくわけです。そうなると、もっと自然に即して考えながら生活することも必要じゃないかなと思った次第です。