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プロが語る家づくり
 | 2020.06.07

LAST. 中古住宅リフォームの注意点

小暮:
最後にですね、松尾先生にこれから中古住宅のリフォームについて伺いたいと思います。家ってこれからどんどん余っていくじゃないですか。その中で中古住宅を活用するという流れはこれから増えていくと思います。まずはリフォームとリノベーションの違いから教えてもらえますか。

松尾先生:
リノベーションというのは、例えば元々オフィスだった建物をホテルに改修するみたいな感じで、用途の変更を伴う全面改修をリノベーションって言ってました。でも最近は住宅のリフォームでもリノベーションという言葉がよく使われるようになっていますね。もう単純にリフォームって言うより、リノベーションって言う方が新しいじゃんという感じで使われることが増えてるんじゃないかな。リフォームというのは、英語ではReとFormです。ReとHomeと思っている人が結構いますけど。

小暮:
リ・フォームですよね。

松尾先生:
Reというのは再び、Formというのは形作るということで、改修するということなんですけど。これはまぁ日本では住宅を改築することを指しますね。

小暮:
外壁張り直すとかね。間仕切りの位置変えるとかね。

松尾先生:
そうですね。改築だけじゃなくて、増築も含む。いわゆる日本語で言うと増改築ということになると思うんですけど。

小暮:
化粧直しとかね。

松尾先生:
これからはやっぱり新築は減っていくのは確実ですし、既存住宅の在庫が余りまくっているという状況からすると、リフォームは絶対的に増えていくだろうと思いますね。

小暮:
で、それをやる場合にですね、単純に外壁を上からパカっと張ってきれいにしましたとか、ダメなフローリングの上にまた貼っちゃうとかね。そもそも古い家って耐震や断熱に問題があることが多いので、せっかくなら費用対効果の高い内窓を付けたり、床下の気密を高めるべきなのに、そういうことをしないで、単純に床暖房付けましょう、エアコンを天井に付けましょうみたいなことをする業者さんがまだまだ多いと思うんですよね。

松尾先生:
新築以上に断熱とかの技量が浸透していないのが、リフォーム業界です。新築の方がレベルはまだ高い。新築とリフォームを両方やってる会社はまだそれなりに知識や技量がある会社が多いんですけど。リフォーム専業でやってる所というのは、もう恐ろしくそういうことに関する知識がない。地域に一社でもまともな会社があればいい方です。

小暮:
見分ける方法がありますか?

松尾先生:
「 Q値もしくはUA値の計算をしたことがありますか?」「C値の測定したことありますか?」「高断熱化するのに、一番最初にやるべきことはなんですか?」この3つの質問に全部答えられたらそのリフォーム会社は一応合格です。たぶんこの3つとも答えられる工務店さんは、地域にない可能性の方が高いと思います。

小暮:
私もこの前、お客さんからリフォームした場所をちょっとチェックしてほしいというので見たんですけどね。窓をそのままにしておいてですね、床暖房を敷いてありました。床下は昔のママなので冷気がバンバンやってくる。あれで床暖房をしても、熱が下からもどんどん抜けてしまっていた。

松尾先生:
それってよく僕がバケツで説明しますけど、穴の開いたバケツに水位を一定に保とうと思ったら。蛇口からずっとある程度の水を流し続けておかないと水位が一定に保てないですよね。暖房も同じで、穴が空いている状態なら暖房を切った瞬間にもうヒューンって温度が下がってしまう。今の業者さんがやったのは、この穴を見ずに水を出し続けることをやってあげたということです。普通に考えたらその穴をまずは限りなく小さくするということが先ですよね。

小暮:
本当に私もそう思います。残念ながら、住宅業界って、私が言うのもなんだけど、やっぱり遅れてる人って多いなって思いますよね。

松尾先生:
暖房の場合、有料の暖房と無料の暖房ってのがありますね。無料の暖房というのは太陽熱。有料の暖房というのは暖房器具から出る熱なんですよ。だから、暖かい住宅をつくるのっていうのは塞ぐ方、これがUA値とかC値の方になるんですけど、隙間をできるだけ小さくする。それがこのパッシブデザイン、もしくは太陽に素直な設計の基本中の基本で、あとは無料のエネルギーをできるだけ活用すること。

小暮:
本当にその通りなんですけど、そういうのを知ってる人って少ないんですよね。こういう理屈や体系というのは最近始まったことじゃないんですよね。前からあったんですよね、話としては。

松尾先生:
私も年に数回お会いしている東京大学の坂本雄三先生という日本の建築行政のトップをやられてた方がおっしゃるには、40〜50年前からやってることは一緒なんだよねって。

小暮:
何でそれなのにほとんどの工務店が…。

松尾先生:
なかなか伝わらなかったんだよね、みたいなことを先生はおっしゃいます。

小暮:
でもほとんどの工務店知らないですよね。

松尾先生:
今僕が言ったことって、「3年前に発見しました!」みたいなことは1個もないんですよ。もうそれは別にほんと40〜50年前から何も変わらない原理原則の話をしてるだけです。けど、正直分かりやすく説明できる人が少なかったというのもあると思いますし、あとは日本はアメリカ・ヨーロッパと違って、家全体を暖かくするみたいな概念がない国だったので。

小暮:
採暖ってやつですね。

松尾先生:
そうですね。採暖というのが文化としてあった国なので。なかなかやっぱり、誰でもそうですけど。生まれて今までやってきたことの常識から離れるのってやっぱり難しいんですよね。

小暮:
要するに今まで家って暖かいものなんだという経験が無かったってことですよね。

松尾先生:
最初僕らが20年前に高断熱とか言ったら、何を言ってんだよとか周りから言われてたんですよ。本当にもう浮いてたんですね。なんでも最初はそうじゃないですか。アーリーアダプターとかという言い方されますけど。最初の方に言った人ってだいたい異端児扱いされます。それが段々メジャーになってきて、やらないとダメだよなという感じになってくる。それにはやっぱり一定の年数がかかると、単純にそういうことかなと思いますけどね。

小暮:
一戸建ては寒いもんだという意識を持っている消費者の方ってまだまだ多いみたいですね。この前もウチのお客さんがお友達と話していると、そのご友人が「でも家って冬寒いよね」って普通に言ったそうなんですよ。それ新築の家らしいんですよ。

松尾先生:
残念な話ですね。

小暮:
本当は家ってそういうものじゃない。家って本来暖かいもので、健康で暮らす場所なんだとわかってもらいたいと思いまして。今日は松尾先生にいろんなことを教えていただきました。ぜひこの動画を見ている皆さんも、家はちゃんとしたつくり方をすれば、そんなに電気代も掛からずに暖かい家ってできることを知ってください。ぜひその辺りを、くれぐれもお気を付けてください。あとはさっき松尾先生から住宅会社選びの基準のページがあることを教えていただいたので、いろいろと勉強される前に、まずは活用していただければと思います。
https://matsuosekkei.com/guideline/checklist/
今日は本当に松尾先生、ありがとうございました。

松尾先生:
ありがとうございました。

対談第二弾

Vol.1 最低の断熱基準さえも義務化できない国
Vol.2 HEAT20 G2でも欧米では最低レベル
Vol.3 全館空調はメンテナンスコストに差が出る
Vol.4 太陽光発電はつけないと損をする
Vol.5 現時点では蓄電池より〇〇〇の方がいい
Vol.6 断熱材は 材質×厚みで考える
Vol.7 外断熱か、内断熱(充填断熱)か
Vol.8 木造と鉄骨はどっちが丈夫か?
Vol.9 大手はなぜ樹脂サッシを使わないのか?
Vol.10 住宅会社を見分けるチェックリスト
Vol.11 太陽に素直な設計
Vol.12 中古住宅リフォームの注意点

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