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プロが語る家づくり
 | 2020.05.17

Vol.6 断熱材は「材質×厚み」で考える

小暮:
ちょっとここから趣旨を変えまして、ウチのメルマガやYouTubeなど消費者の方からよくいただく質問に先生からお答えいただけないかと思います。まず多いのは、どの断熱材を使えば良いんですかって聞く方がいらっしゃるんですが、これどうですか。

松尾先生:
もうかれこれ10年か15年位前かな。建築知識という建築専門誌に記事を書いたことがあるんですけど。実は工務店さんからの質問でも一番多いんですね。例えば断熱材を評価する項目というのは、それ自体の値段ですよね、それから燃えた時に有毒ガスが出るのか出ないのか、製造時のエネルギー使用量はどれぐらいなのか、燃えやすいかどうか、解体するときにリサイクルができるのかどうか、厚み当たりの断熱性能が薄くても性能が出るのかどうか、さらには経年劣化するかどうか、それに施工性が良いのか悪いのかみたいな。今パっと思い付くだけでもこれくらいたくさんの評価項目がある。

小暮:
人によって何を大切にするかで答えが違ってくるということですね。

松尾先生:
はい。でも、そんな中で一番大事なのは何かなって思ったら、僕の場合は断熱性能当たりの価格ですね。

小暮:
コスパってやつですか。

松尾先生:
まぁ要するにコスパってやつですね。例えば「ウチはネオマフォームを使ってるから高断熱だ」という工務店さんがいらっしゃるんですけど。確かにネオマフォームというのは今一般的に売られてる断熱材の中では、真空断熱材という特殊な断熱材を除けば、一番薄くても性能が出る断熱材なんですね。

小暮:
0.02でしたっけ。

松尾先生:
そうですね。0.020という熱伝導率なんですけど。これって例えば、グラスウールの10cmとネオマフォームの5cmは同じ性能が出るという、そういう感じなんです。ネオマフォームを使ってるから高断熱ですという会社をよくよく聞いてみたら、ネオマフォームの25ミリだけって場合もあって、これならグラスウール5cmと性能的には何ら変わりないんですよ。それでウチは高断熱の省エネ住宅だとかっていってる会社が、実は日本中にたくさんあります。

小暮:
その通りですよね。

松尾先生:
しかも、ネオマフォームの25ミリならグラスウール5cmの家と断熱性能は一緒です。でも断熱材にかかる価格はグラスウールの約4倍かかるんです。これを分かって使っていれば良いんですけど。4倍払う価値ってなかなかないですよね。これも「同じ土俵で比較する」という話なんですが、こんな簡単な計算が出来ない工務店さんが実に多い。別にネオマフォームが悪いって言ってる訳じゃないです。営業マンの話聞いて、これいいねって惚れ込んだ結果、同じ土俵での計算もせずに4倍高くなっていることに気付きもせずに、ネオマフォームを使ってしまってる工務店さんが滅茶苦茶多い。

小暮:
セルロースファイバーもそうですね。実際セルロースファイバーってグラスウールと熱抵抗値は変わらない。

松尾先生:
ほぼ一緒です。

小暮:
ほぼ一緒ですね。そんなに凄い高い訳じゃないです。でもなんとなくセルロースファイバー使ってる方が凄い暖かいイメージを持つ人が多い。

松尾先生:
ちょっと話が元に戻るんですけど。今言った様にいろんな項目があって、全ての項目に〇が付く断熱材はないです。

小暮:
ないですよね。

松尾先生:
絶対ないです。その中で、僕が個人的に一番重要だと思うのはコスパ。それ以外のことを重視するのは、もうそれはそこの工務店なりお客さん次第だと思うので。だからベストというのがなかなか言いにくいというのが正直な所ですね。その時にコスパが一番安い断熱材ってなったら、やっぱりグラスウールとロックウールになるんですね。ロックウールは少ないので、日本もそうですうが、世界中どこを見渡しても、グラスウールが一番圧倒的に多い。それはもうやっぱり、費用対効果が高い物にマストが集中するのは、どの業界でもどの国でも一緒なのです。

小暮:
なるほど、原理原則だと。

松尾先生:
でもネットを見るとグラスウールを非難する記事がもうやたらある。別にネオマでも、ウレタンでもなんでも、グラスウールが悪いって言えなければ、値段が3倍とか4倍の物を売るってできないですよね。絶対無理なんです。攻撃するネタを探すしかない訳です。

小暮:
それで北海道で…。

松尾先生:
そうです。不幸なことに、グラスウールというのは30年位前の北海道などの寒冷地で、まだ断熱・気密・通気・防湿という内部結露が起らない様にするための学問体系とか施工体制というのが出来てなかった頃に、しかも今よりもずっとグラスウールの密度がずっと低い時期に、ナミダダケが生えたとか、内部結露とカビが凄くなったという写真がいっぱいあるんですよ。

小暮:
あれ、いまだにあれ使うメーカーさんいますね。

松尾先生:
その時の写真をいまだに使ってる会社さんがいっぱいいて。それはグラスウールが悪い訳じゃなくて、使い方が悪かっただけの話。ただし、今もやっぱりグラスウールは万人向けかというとそうではなくて、設計も施工も上級者向けなんですね。だから設計者がちゃんと防湿シートの貼り方とかを説明して、施工者もその通り丁寧にやってくれさえすれば、お客さんからすれば凄いコスパが良いんですよ。設計も施工も上級者であれば、これ程コスパの高い断熱材はないですよ。

小暮:
グラスウールについていうと、袋入りのグラスウールってありますよね。いまだに売られてるじゃないですか。あれはどうなんですかね。

松尾先生:
はい。個人的には使わない方が良いかなと思いますね。

小暮:
あれ絶対気密取れないですもんね。

松尾先生:
あれで気密をちゃんと施工するというのは、やっぱり難しいですね。

小暮:
熱欠損も起こすしかないんじゃないですか。

松尾先生:
防湿と気密の原理原則というのは基本的に、隙間なく連続してという話になります。例えば横方向には耳というのが付いてるんで重ねていけばできますが、高さっていろんな高さがあるので、スパって切ってしまったら、耳は取れないですね。じゃあ重なる所はどうするんだ。

小暮:
だからこういう風にやってるだけですよね。こうなんないですよね、横はなるけどね。

松尾先生:
はい。でも横もこの柱と間仕切りの間って、幅ってピッタリあの袋の幅ばっかりじゃないんで。幅がズレた所どうすんのって。やっぱり無理なんですよね。ましてや筋交い入れてる所なんかどうするんという話になる。

小暮:
いまだにでも袋入りグラスウールって多いみたいですね。私は使ったことないから分からないけど。

松尾先生:
なので、グラスウールは悪くないんですけど。グラスウールを使うんだったらやっぱり裸で使った方が絶対いい。裸で使わずにまともにちゃんときれいに断熱材を入れてる会社というのを、僕は関東以西で見たことがないですね。

小暮:
私も地元でちゃんと凄いきれいだなというのは見たことないです。

松尾先生:
ちゃんと施工すればグラスウールもロックウールも非常にちゃんとした性能が出るんですけど。隙間がある状態になったらもう全然カタログ値の性能が出ない。そこら辺も注意が必要ですね。だからもう自分が初心者なんだという自覚が設計者・施工者にあるんだったら、安易にグラスウールを使わない方が良いと思います。

対談第二弾

Vol.1 最低の断熱基準さえも義務化できない国
Vol.2 HEAT20 G2でも欧米では最低レベル
Vol.3 全館空調はメンテナンスコストに差が出る
Vol.4 太陽光発電はつけないと損をする
Vol.5 現時点では蓄電池より〇〇〇の方がいい
Vol.6 断熱材は 材質×厚みで考える
Vol.7 外断熱か、内断熱(充填断熱)か
Vol.8 木造と鉄骨はどっちが丈夫か?
Vol.9 大手はなぜ樹脂サッシを使わないのか?
Vol.10 住宅会社を見分けるチェックリスト
Vol.11 太陽に素直な設計
Vol.12 中古住宅リフォームの注意点

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