外壁は、住宅の構造体を雨風や日射から守り、室内の快適な環境を保つために欠かせない重要な要素です。単なる“外側の見た目”ではなく、断熱・気密・通気といった性能の中核を担う構造層のひとつであり、住宅の耐久性や快適性に直結しています。外壁は外的要因から守る“盾”であると同時に、壁体内の湿気や熱を適切にコントロールする役割も担っています。外壁の施工において最も重要なことは、見た目のデザインや仕上げ材だけではなく、その“構成”と“納まり”です。特に通気層は外壁性能の根幹をなす部分であり、ここに十分な空気の流れを確保することが、断熱材の乾燥状態や構造体の健全性に直結します。加えて、軒の出をしっかりと確保することで、直接的な雨水の侵入や日射による劣化を防ぐ効果もあります。また、開口部(窓まわり)や水切り、コーキングの納まりなどを意識した設計と施工が、外壁の健全性を保つ上で極めて重要です。
ただし、近年の住宅業界では施工スピードやコストを優先するあまり、外壁の性能を犠牲にしている現場も少なくありません。例えば、外壁裏側に設置している通気層の厚みが足りない事で、壁内の湿気を排出しづらい状態になってしまっていたり、軒の出を極端に短くしてしまったりする家では、外壁に雨水が当たり続ける事で汚れが付きやすくなったりする事があります。さらに、水切りの取り合いが不十分だったり、開口部周辺の防水処理が甘かったりすると、雨水が壁内に侵入し、構造材の腐朽や断熱材の性能低下を引き起こすこともあります。外壁は目に見える部分だけでなく、その裏側にある納まりや構成こそが重要であり、表面的な意匠や価格に惑わされず、長期的視点で施工の質を見極めることが求められます。
外壁材選びにおいて大切なのは、見た目のデザイン性だけでなく、素材の耐久性や将来的なメンテナンス性を含めて“長く住まう”という視点で選ぶことです。近年ではサイディングが主流となっていますが、特に大手メーカーの特殊サイディングには注意が必要です。専用の製品や塗料を使う仕様のため、完成してから10年位経ち部分的な補修が必要になった際、同じものが入手できなかったり、メンテナンス費用が高額になったりするケースが少なくありません。実際に、「10年目で再塗装が必要」と言われていたはずが、外壁材自体の交換を勧められるという事例も見られます。一方で、当社が推奨しているのは杉板のような無垢材や、左官による塗り壁です。杉板は地域によっては安定して流通しており、汎用的な材料のため将来的に一部交換が必要になったとしても、同じような素材で補修が可能です。また、時間とともに風合いが増すという点でも、素材としての魅力があります。塗り壁に関しても、職人の手作業による施工が求められるため初期費用は高めに見えますが、シーリング材に頼らない納まりができるため、目地からの劣化や漏水のリスクが少なく、長期的にはメンテナンス性に優れています。外壁材は一度張ってしまえば簡単には交換できません。だからこそ、表面的な価格や見た目だけで判断するのではなく、将来的なメンテナンス性、素材の安定供給、部分補修のしやすさなど、住まいの“持続性”を支える視点で選ぶことが重要です。
外壁塗装の選び方で大切なのは、素材の特徴を理解し、将来的なメンテナンスまで見据えて判断することです。木材の外壁は風合いが良く、調湿性にも優れ、長期的な耐久性を確保する上でも非常に優れていますが、使用する塗料や施工方法によって結果は大きく変わります。当社がよく使用するのは「ウッドロングエコ」です。これは天然鉱物由来の無色透明な防腐塗料で、塗膜を作らず木に浸透し、自然な経年変化を促します。施工も簡単で、裏表両面に丁寧に塗ることができるのが特徴です。ただし、防腐性能はやや控えめなため、水平面(特にウッドデッキなど)には不向きで、外壁などの垂直面への使用をおすすめしています。一方で「キシラデコール」は、防腐性能に加えて着色も可能な塗料です。色も様々ありますが、濃い色は色褪せが早く、塗った直後は美しくても時間が経つと劣化感が出やすいのが難点です。いずれの塗料を使うにしても、定期的な再塗装は必要です。一般的には10年ごとを目安にしていますが、軒の出や通気層の有無など、設計次第で耐久性は大きく変わります。特に軒ゼロ住宅に無垢材を使うのは劣化リスクが非常に高く、10年も経たずに無残な状態になることもありますのでオススメ出来ません。塗装と合わせて重要なのは、外壁全体の構成と施工精度です。木の外壁は正しく扱えば非常に耐久性が高く、コスト面でも有利です。塗料選びは、その性能を引き出すための“道具”として、素材や設計に合わせて慎重に選ぶべきです。