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 | 2024.05.30

最適なUa値はいくつなのか?を松尾先生と討論してみた

今回は、最適なUA値について解説します。

家の性能については、2025年から新築住宅において、断熱等級4が義務化になります。詳細については別の動画で話していますから、そちらを見てください。

断熱等級の基準は、4の上にも断熱等級6・7とか、HEAT20のG2・G3とか、いろいろな基準があります。断熱性能・断熱等級が上がると、UA値の値は低くなります。車で言うと燃費がよくなるという感じです。今日の話は、それをどこまでやればいいのか、という話です。

これは当たり前な話ですが、北海道がすごく寒いというのは、なんとなくイメージできると思います。冬は寒いのでそれだけ熱損失を大きく起こしますが、夏は涼しいから熱損失は少ないです。一方沖縄は、意外に群馬県より涼しいんです。昔私が沖縄に行った時に「どちらが来たんですか」と言われたので「群馬県です。沖縄は涼しいですね」と言ったら「え?そうですか?」と言われました。「ちなみに群馬県はどれくらいなんですか?」と聞かれたので「40℃くらいかな」と言ったら、とても驚いていました。

群馬県だと夏の気温は40℃なので、夏の熱損失が大きいです。ただ冬は、旭川ほど寒くはありません。今年は暖冬だったけど、大体-2~3℃ぐらいです。気温の振り幅は、群馬は40〜-2〜3℃、旭川は25〜-20℃で、どちらも大体45℃ぐらいで一緒です。ただ、寒い方に振り幅が大きい方が、当然熱損失が大きくなり、暖めるエネルギーもすごくかかります。それに対して、断熱性能を上げて熱損失を防ぐというのが、寒い地域のやり方です。具体的には、G3に近づける方がいいという感じです。

例えば、当社が施工エリアとしている関東平野で考えてみます。関東平野で断熱性能をいくつにするかとなった時に、当然性能が上がるほど熱損失は減るんだから、いい気がしますよね。ただ一方、性能を高めれば高めるほど、お金がかかります。もう1つの要素としては、言い方は悪いんだけど、そこまでやっても仕方がないというのも実際はあるんです。

なぜかというと、さっき言った通り関東平野のあたりは、冬の熱損失はそんなにすごいわけではないからです。その部分は、断熱性能を高くして補うよりは、日射取得を入れて暖めるとか、もっと言うと太陽光発電を使う方がいいです。太陽光発電を載せているお家は、今は多いと思います。当社のお客さんも100%太陽光発電を載せています。設置するのにお金はかかっているけど、熱源は無料の太陽光発電で作ったエネルギーを使った空調計画で補えれば、家の性能をものすごく高くしなくてもいいという考え方もあります。

具体的にそれをやるならどんな感じなのかを説明するにあたって、私が言うよりもプロの力を借りた方がいいということで、今回は松尾先生のお力を借ります。先日Facebook上で、松尾先生とたまたまそういう話でやりとりをしたので、その時の内容をみなさんにご紹介します。

もともと松尾先生は新建ハウジングで、東京ゼロエミ住宅を特集していたんです。それについて松尾先生が、以下の内容を語っていました。

「新建ハウジングのトップ値が東京ゼロエミ住宅です。その新しい基準を見ると、水準A(一番いい基準)が、UA値0.35に設定されていました。これは、私が兼ねてからずっと言い続けていたG2.5、断熱等級6.5という数字です。現時点でコスト的にも厳しいG3をトップに設定せず、この水準に持ってきたことは、全体としてのCO2削減には結果的にはよい影響を与えると感じます。」

どういうことかというと、G3をトップ基準にすると、それを達成できた住宅の省エネ効果は確かに大きいけど、費用が高すぎて最初から諦めてしまう、ということです。「そこまでしなきゃいけない」と言ってしまうと、工事コストも高くなってしまうし、それを施工できる人が限定されてしまう可能性もあります。

G3は付加断熱もしていかないといけないレベルです。そうなると、細かい納まりは厳しくなってきます。例えば窓周りの施工だとか、断熱材の連続性とか、そういうところを担保するのが難しくなります。また、ものすごく高価な断熱材を使わざるを得ない場合は、最初から諦めてしまうパターンが多くなると思います。

松尾先生は「東京ゼロエミ住宅の水準に設定すると、現状でG2をクリアしている真面目な工務店さんが、もうちょっと頑張ろうという気になる可能性が高く、結果として1軒あたりの省エネ効果×取り組み件数で見ると、総合的な効果は良い方に行くのでは、というのが私の考えです」とおっしゃっています。すごいものがたくさんあるよりも、ちょっとレベルは落ちてもその数が増えた方が、最終的には全体として効果が高いという話です。

先生は「さらに東京だと土地も狭く、南からの日射取得がまともに取れない地域も多いです。」ともおっしゃっています。そうなるとUA値0.35(G2.5よりもややG3寄りより)はちょっと厳しいです。東京は土地が狭いから、日射取得が取れません。そうすると冬の熱損失が大きくなるから、やっぱり0.35ぐらいに持っていった方がいいと思います。

さらに先生はこうおっしゃいました。「ただ、関東でも東京以外のエリア、例えば群馬県・埼玉県などは、UA値は多少悪化するけど南にしっかりと大きな窓をつけた方が、年間の暖房費・CO2排出量は減少します。UA値0.35を目指したいけど、日射取得が取れない地域の場合は0.35にしない方がいい、という感じにも捉えられます。よって、同じ6地域でも土地が広いエリアにおいては、UA値0.38ぐらいまで緩和した方が、新基準をクリアするために南の窓まで小さくしようという本末転倒が働かなくなるためには重要です。」

もう1回言います。

「同じ6地域でも、土地が広くて日射取得ができる地域でUA値0.35を目指そうとしてしまうと、逆に日射取得を小さくする方向になってしまい、それは本末転倒になってしまいます。」これは本当にその通りだと思います。

そこで私が「逆を言うと、日射取得ができる温暖地なら、UA値0.38になるように窓面積も調整した方がいい、という意味ですよね?」と聞きました。松尾先生は「なかなかマニアックな質問ですね。これに関しては、従来の標準仕様においては、構造が許す限り南窓を置きましょうとアドバイスをしました。ただ今は、太陽光発電を設置することが前提になりました。太陽光発電もセットで暖房費の収支を考えると、日没後朝方までどれだけ室温が落ちにくいかが、これまでより重要になります。そう考えると、南北に細長い住宅は従来どおり南窓を最大に取るのがいいですが、正方形に近い住宅・東西に長い住宅については、必ずしも1階・2階すべて掃き出し窓がベストではないと言いにくくなってきます。この辺りは、近日中に最適値となる数値を発表したいと思います」と答えました。

UA値0.35の東京ゼロエミ住宅とか、G2.5を目指すのは1つの方法なんだけど、あくまでもそれは日射取得が取りにくい場所というのが1つの条件で、日射取得が取れないなら0.35までしない方が返っていいだろう、というのが1つの指針だということです。

もう1つ、建物の形によって温度差は本当に変わるんです。例えば図のように、南道路に面した土地で、南北に長い長方形の土地と、東西に長い長方形の土地があったとします。土地に合わせて長方形の家を作る場合、南北に長い家の方は、南面の狭い面からしか日射取得ができないから、南面に最大に窓をつけてなるべく熱を入れないと、家の奥まで熱が届きません。一方、東西に長い家は、南側の広い面に大きな窓をつけてしまうと、熱が入りすぎてしまいます。1階は大きな掃き出し窓でも、2階は腰窓などにした方が返っていいだろう、ということです。

なおかつ、太陽光発電がついているのであれば、太陽光発電を活用できます。当社のお客さんの例でも、日射取得がうまくできない場所で建てた方がいました。そのお家は、日中仕事に行っている間に、太陽光発電を使って、夕方まで床下エアコンで家をある程度暖めておき、帰宅した瞬間にそれを切り、その状態で朝まで熱を持続させる、ということをやっています。一般的な、寒くなってから床下エアコンをスタートするという使い方とは少し変わってきます。この辺りは、建てる場所・建物の形・条件・ライフスタイルによっても変わってくると思います。

以前、私のメルマガに「共働きでほとんど日中は家にいないけど、それでも太陽光を付けた方がいいですか?」という質問をいただいたことがあります。そういう方はおひさまエコキュートを使うとか、さっき言ったような冬場の暖房の使い方をするといいと思います。夏は屋根裏エアコンを基本的にずっと回してもらうようにしているので、うまく太陽光発電を活用できているけど、冬はそういう使い方もあります。他にも、タイマーセットで日中洗濯をしたり、乾燥機でも電気の乾燥機で日中に回す人もいます。

私の家も乾燥機と乾燥機付きの洗濯機があって、太陽光をつけているのでその電気で回しています。時間はかかりますが、コストは安く済みます。当社のお客さんでは、最近は在宅ワークをしている方もいて、洗濯もしながら仕事をしている方もいます。そういう使い方もできるし、やっぱり太陽光は使い勝手もいいと思います。

しかし、いまだに「太陽光は損をする」と思っている人がいるみたいです。先日もモデルハウスに来られた方から「太陽光はつけないとまずいですか?」と質問されました。あくまで個人の自由だから、つけなきゃまずいということはないです。ただ、つけないことによるデメリットは多いと思います。

その方は「太陽光発電は10年後に撤去しなきゃいけない時にすごくお金が掛かると聞く」とも言っていました。しかし、そもそも10年じゃ撤去しません。私の家は太陽光をつけて14〜15年ぐらい経ちますが、一度も壊れていないし、発電能力も変わっていないし、撤去する予定もありません。30〜40年後には撤去すると思うけど、おそらく30年後には完全にリサイクルする世界になっていると思います。ですから撤去する時にとんでもなくお金が掛かることはないと思います。

実際にそんな話も、広島の巨匠から聞いています。築20年以上の家の屋根をリフォームする際に、一度太陽光発電を外したそうです。ただ、20年前の太陽光発電をそのまま使うのはもったいないから、新しい太陽光を乗せて、この先30〜40年使おうという計画にしたそうです。その時に外した太陽光発電の処分について、解体屋さんに聞いたらとんでもない金額を言われたそうです。しかし住宅業界の仲間内で「そんなにしない」という話を知っていたそうです。いろいろ探したところ、リサイクル業者さんが、解体屋さんに言われた金額の何分の1かの値段で引き取ってくれたそうです。もちろん地域差もあると思いますが、おそらく30年後にはそういう仕組みができていると考えています。国としても今そういう取り組みをしています。ですから、太陽光を今からつけて10年後にすごくお金が掛かるということは、おそらくないと思います。