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プロが語る家づくり
 | 2020.05.27

Vol.9 大手はなぜ樹脂サッシを使わないのか?

小暮:
私は樹脂サッシしか使ってないんですよ。ちょっと宣伝になっちゃいますけど、群馬県の南部地域で、樹脂サッシ採用率No1という。

松尾先生:
採用率?数じゃないんですね。

小暮:
数じゃないです、率でNo. 1です。だって100%ですから(笑)。いつも松尾先生がおっしゃる通り、やっぱり熱の出入りは窓からが50%ぐらいになる訳じゃないですか。なので窓を強化するというのは、コスパも良いし、物凄く簡単な訳ですよね。

松尾先生:
そうですよね。

小暮:
ですが、こういう質問をする方がいらっしゃるんですよ。じゃあなんでそんなに良いサッシなのに、大手ハウスメーカーは使わないんだと。大手ハウスメーカーさんが樹脂サッシを使わないんのは、もしかして何か秘密があるんじゃないかというんですが、何かあるんですかね?

松尾先生:
いや、秘密は何もないと思うんですよね。これ実は今日の質問の中で一番難しいんですけど、日本の省エネ基準で見るとね、窓の熱貫流率が一番ひどいのが4.65以下というのがあって、その次が3.49以下、一番良いのが2.33以下というのがあるんですね。一応樹脂アルミサッシというやつでも、2.33以下というのをクリアしている。だったらそれ以上やっても、基準上は何も変わらないだろうと。まずそれがあるのかなと思いますね。

小暮:
でも熱貫流率は完全に変わりますよね。

松尾先生:
変わりますね。僕なんかAPW330とか430というのをよく使いますけど。330ってだいたい熱還流率は1.35。430になったらもう1ぐらいになるんですね。

小暮:
0.9とかね。

松尾先生:
0.9とか1になるんですね。もう桁が違う。まずその基準の話がありますね。それから、僕は住宅サッシメーカーによく言うんですけれども、室温20℃にした時に、寝てて喉が乾燥しないとか、もしくは誰か一人家族がインフルエンザになった時に、感染しにくくしようと思うと、20℃でやっぱり湿度50%確保したい。その時に外気温が0℃の場合だともう樹脂アルミの窓って下枠が必ず結露するんですね。人間に理想的な状況に持っていった時に、結露する窓というのはそれは基準どうこうじゃなくて、やっぱり良くないだろうと思いますね。

小暮:
よく先生がおっしゃるのが、20℃で50%だと絶対湿度で何gだったか。

松尾先生:
7gですね。

小暮:
ですね。7gでもちょっと少ないですよね、実際ね。

松尾先生:
少なくはないんですけど、絶対湿度で7gでも例えば普通の住宅であったら、エアコンで暖房していると、35坪とか40坪の住宅で、換気法式にもよりますが、1日10ℓは加湿が必要なんですよ。1日10ℓ加湿してる家がどんだけあるかっていったら、基本的には僕らが指導してるようなお客さんの家以外では、もうほとんど0に近いですよね。ほとんどの家が冬場、凄い乾燥してるんですよ。

小暮:
確か松尾先生が前におっしゃっていた絶対湿度のg数で、7か8あると6時間後に95%ぐらいでしたっけ。

松尾先生:
まぁ95%までやろうとするとやっぱりね。8とか9ぐらい欲しいと思いますけど。でも8、9やろうとすると、とてつもない加湿量がいる。だから、人間にとって理想的な状況に持っていった時に、下枠が結露しない様にみたいなことは大手住宅メーカーは特に考えてない、というのも一つあります。

小暮:
でも健康住宅って言ってますよね。

松尾先生:
んーそこまで謳っている所は少ないのかなという気はしますけどね。

小暮:
健康とまではね。

松尾先生:
当然、結露をずっと放置してると、カビも生えてきますし。あのゴムの所にカビが生えると厄介なんです。一度サッシメーカーの人に聞いたんですよ、カビキラーまいても良いんですかって。そしたらカビキラーはやめて下さい、負けますって。そしたら結露しない窓作れよという話なんですけど。

小暮:
劣化しちゃうんですよね。

松尾先生:
そうです。後はやっぱり、樹脂アルミサッシから樹脂サッシに変えるとなったら、1棟当たり20万〜30万は上がりますよね。

小暮:
いやー、もうちょっと高いんじゃないですか。330でも30万くらいは上がるでしょうね。

松尾先生:
これが一番の理由かもしれません。僕が付き合いのあるいろんな建材メーカーの人たちの話を聞いていると、例えば大手住宅メーカーに、家1棟に1万円、もしくは2万円お金かけてもらったら、将来において絶対白アリが来なくなりますよ、みたいな営業をかけたとしますと。

小暮:
2万円?1棟ですよね、坪じゃないですよね。

松尾先生:
1棟です。工務店行くと、それええやないかって言って、もう社長がグッと引き込まれて採用してくれる。けれど、住宅メーカーになんて言われるのかっていったら、「お前なって、簡単に1棟2万円って言うけど、それ1万棟掛けたら幾らになるのか分かってるのか」って。それでもう足蹴にされると。だからもう大手住宅メーカーには行きたくないみたいな話をいっぱい聞いたことがあります。

小暮:
うーん。大手は棟数が大きいですからね。そういうことが大きな理由なのかもしれませんね。

松尾先生:
これも超大手住宅メーカーの人と飲み会の席で本音を聞いたんですけど、もう正直、僕は一条工務店さんを一番最高レベルの性能という風によく言ってるのですが、一条工務店さんにはもうどうやっても性能では勝てないというのは、他メーカーは分かってるんですよね。

小暮:
まぁ事実ですよね。

松尾先生:
で、絶対勝てないから、その他の設計力であったりとかデザイン力であったりとか。その他の項目で勝負しなさいというのはもう他の住宅メーカーの中では徹底されてる訳ですよ。

小暮:
見た目とかね、キッチンがこうだとかね。

松尾先生:
そうです。絶対勝てないというのが分かってる所に。例えばもう3倍性能が離れてるのに、その窓を変えることによって、1.2倍にちょっと追いついたとしても、どっちにしても勝てないんだったら、そこにお金をつぎ込む必要はないだろうと考えますよね。

小暮:
まぁ私もたぶんそうだと思うんですよ。やっぱり商売ですからね。ましてや会社の規模が大きいと年間これだけの売上でね、こんだけの社員がいるんだからこんだけ売上が必要ってなると、如何に相手に有利な戦いを挑むか、というのはビジネスの鉄則ですから。そうすると性能だとか住み心地の良さではない所で勝負するというのが、戦法になりますよね。

松尾先生:
たぶん、そうじゃないかなという気がします。

対談第二弾

Vol.1 最低の断熱基準さえも義務化できない国
Vol.2 HEAT20 G2でも欧米では最低レベル
Vol.3 全館空調はメンテナンスコストに差が出る
Vol.4 太陽光発電はつけないと損をする
Vol.5 現時点では蓄電池より〇〇〇の方がいい
Vol.6 断熱材は 材質×厚みで考える
Vol.7 外断熱か、内断熱(充填断熱)か
Vol.8 木造と鉄骨はどっちが丈夫か?
Vol.9 大手はなぜ樹脂サッシを使わないのか?
Vol.10 住宅会社を見分けるチェックリスト
Vol.11 太陽に素直な設計
Vol.12 中古住宅リフォームの注意点

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