小暮:
たまにお客さんに、他社さんのカタログを頂いたりすると、色んな事をいっぱい書いてあります。やっぱり、あれもこれも使っています、と言う方が人間は安心するんでしょうか。
松尾先生:
うん。これね、最近僕講演で良く言うんですけど、なぜ各社のホームページやカタログや営業マンのトークを聞けば聞くほど分からなくなるかって言ったら、肝心な所が全部、僕が言うポエムで誤魔化されているからなんですよね。
小暮:
あー、そうですよね。
松尾先生:
例えば自動車で言ったら、燃費って言ったらリッター何キロ、出力って言ったら何馬力みたいなのが、カタログに全部共通の誤魔化しの無いものが書いてあります。まず、例えば燃費、暖かさって言ったら、UA値、Q値、C値などがありますが、まずそれを出している会社が非常に少ない。
小暮:
少ないですね。
松尾先生:
UA値、C値、Q値っていうのも、暖かさを構成するそれぞれの一要素なんですけれども、本当はね、「暖房負荷」という指標で出していただきたいんですけど。それを出している会社はまず無いです。
小暮:
無いですね。
松尾先生:
また、出していたとしても、その出し方に各社共通の基準がない。だから、自分の会社が一番有利になる様な条件で出している。
小暮:
よくカカタログに載っているQ値と実際造っているお家のQ値が違うなんていう事がありますね。
松尾先生:
それはね、当たり前と言うか、もう残念ながら普通の話ですね。
小暮:
かなり多いみたいですね。
松尾先生:
だから、これを見られおられる方が、別にどこで家を買うにしても知っておけばいいのは、例えばUA値っていうのが、断熱性を表す値として今一番共通的にどこの会社でも通用する値なんですけれども、それが群馬あたりであれば、0.46以下かどうかをみておいて下さい。
小暮:
そうですね。Q値だと1.5ぐらいですかね。
松尾先生:
Q値で言うと1.6ですね、1.6以下。C値で言うと1以下、これが気密性能なんですけど。これが守れていない会社は、もうやめた方がいいですね。
小暮:
一応ウチの会社は、Q値1.5で、C値0.5ですから、先生のお陰で、とりあえずOKかと。
松尾先生:
そうですね。まず、これが最低基準。それと、断熱・気密に関する事じゃないけど、出来れば「耐震等級3」を。「耐震等級3相当」とかじゃなくて、耐震等級3を担保しておかないと、この間の熊本地震みたいな、震度7が連続して来るとか、首都圏直下型地震がきた場合に、命は多分守れるんだけど、大破する可能性があるんですね。要するにもう2度と使えない状況になってしまう。命が助かればいいという人は別に良いですが。
小暮:
ローン残りますけどね。
松尾先生:
そうですね。または、その家が修理ってなったら莫大な修理費用。建て替えとなったら建て替え費用若しくは、住み替えるにしても賃貸の費用が要ります。結構、経済的には厳しくなる。それが嫌だったら、やっぱり耐震等級3はこれからの時代に必須です。その3つの条件を入れると、多分殆どの工務店さんが消えます。
小暮:
いまだに耐震してない会社って多いですよね。
松尾先生:
そこら辺をクリアしている会社であれば、後は間取りであったりとか、デザインであったりとか、例えばフローリングの質感などは自分達の好みで選んでいただいたらいい。総合的にその値段が自分達に高いか安いかっていうだけの判断になります。あとはポエムですから。営業マンっていうのは、もう好き放題言いますから…。
小暮:
そうですね。ウチに来るお客さんが良く言うのが、分かんなくなっちゃうんですよねと。色んなとこ回っちゃって、大きな展示場で5か所ぐらい回っちゃうと。各会社が色んな事を言いますから。
松尾先生:
例えば、木造の会社に行けば、木造大丈夫ですよって当然言いますし。鉄骨の会社に行けば、鉄骨は強いですよと言います。でも言っときますが、鉄骨の耐震等級2と木造の耐震等級3の住宅があれば、絶対に木造の耐震等級3の方が強いです。逆に、木造の耐震等級2と鉄骨の耐震等級3の場合、鉄骨の耐震等級3の方が強いです。営業マンとカタログのポエムコンテストに付き合う必要はありません。
小暮:
そういう状態のお客さんには私も色々アドバイスします。例えば鉄骨の良い所も木造の良い所もありますよと。鉄骨の場合は、スパン(柱と柱の距離)が広く取れる。木造はさすがに限界があります。逆に鉄骨はどうしても断熱性能が悪くなるので、その分しっかりしないと寒くなりますよと。
松尾先生:
鉄骨はスパンが飛ばせる事が最大のメリットだと思いますが、でも30〜40坪の住宅でそんなにスパンを飛ばさないといけない事はほぼ無いですよね。
小暮:
無いですよね。逆に飛ばしたら危ないですよね。
松尾先生:
それと後、今は門型フレームとか色んなやり方があるので、木造でも別に6mぐらいまでは普通に飛ばせますしね。
小暮:
そうですね、後はコストのバランスでね。
松尾先生:
そうですね。後はもう1個皆さんが判断する上で非常に面白い指標があります。そこの会社のモデルハウスの周囲、外周部を一周ぐるっと回ってもらって、エアコンの室外機が何台あるかっていうのを数えてもらうといいですよ。それが、何台なければその家を暖かく、涼しく出来ないかっていう答えなので。
小暮:
確かに、分かりますね。
松尾先生:
もう有無を言わさない答えです。僕が知っている最高記録13台ってのがありました。
小暮:
それは凄いですね(笑)。
松尾先生:
それだけ無いとそのモデルハウスは冷暖房出来ないと、その会社自体が思うから付けている訳で。逆にね、1台2台だったり、ちょっと大きめの家なら3台というのもありかなと思います。暑いモデルハウスとか寒いモデルハウスって絶対ないですから。
小暮:
そうですね。後はね、今松尾先生がおっしゃった様に、窓の事はなかなかお分かり辛いと思うんですけど。付け方と位置を見ただけでも、その家の性能って分かりますよね。
松尾先生:
分かりますね。
小暮:
あとは、その設計した人が「どのぐらいのレベルで分かっているのか」も分かりますね。
松尾先生:
もう分かりますね、すぐ分かります。
小暮:
極端な話、営業マンの話を聞かなくても、室外機の数とその家の設計を何件か見れば、何となく分かりますもんね、性能値はね。
松尾先生:
そうですね。だから最初にもちょっと言ったかもしれないですが、南の窓は大きく、東西北面は小さく。南の窓に関しては、庇(ひさし)、若しくはアウターシェイドが付いてるかどうか。
小暮:
そうですね。あとは窓はアルミじゃなくて樹脂を使って。
松尾先生:
そうですね。
小暮:
後まぁ、さっき言った断熱性能と気密性能で言えば。C値・気密性能で言えば1以下。断熱性能で言えばUA値で0.47でしたっけ。
松尾先生:
0.46ですね。
小暮:
Q値だと1.6ですね。これ以下でないと、群馬県の多少温暖な地域ですと、これからは厳しいんじゃないかということですね。
松尾先生:
そうですね。その位を担保していると、引越し前の住宅よりも安い光熱費なのに、年中快適っていうのが実現できます。日本のエアコンの平均利用年数は13年が平均ですが、13年毎にたった1、2台交換するだけで家中ずっと快適に出来る。特別な工事も別にいらない。
小暮:
交換するだけですもんね。
松尾先生:
それもね、やっぱり結構大事です。僕自身がなぜそういう風に考えるに至ったかと言うと、僕が高校1年生の時にですね、某大手住宅メーカーで、結構フルオプションの家を建てたんですけれども、セントラルクリーナーが付いていて、家庭内インターホンが付いていて、ジェットバスが付いていて、オートロックが付いているという家だったんですけど。今でも残っている機能って、ジェットバスだけです。後は全部壊れて、修理費用が無茶苦茶高い、若しくはもう部品が無い。特殊設備を使うと、後々本当にどうにもならないことになる。
小暮:
大変ですよね。売れなくて製造中止ってこともあります、それ怖いですよね。
松尾先生:
それと後、最近僕も10年点検にちょくちょく行くんですけど、その時に痛感しているのは、新築の時にプラス20万とかだったら結構すぐ出るのに、改修でじゃあ今から小屋裏エアコン出来ますよとか言っても、その時に20万30万っていうお金は、多分皆さんお子さんに受験などの時期に重なるからと思うのですが、本当にお金が出てこないんですよね。
小暮:
出ないですよね。
松尾先生:
なので、汎用品を使ってっていうのは凄く僕は大事だなって思っています。
小暮:
良くお客さんに話すのですが、世の中には色んな全館空調システムあるんだけど、余りにも特殊な物は壊れた時に困りますよと。一番怖いのはメーカーが製造中止になった時。その高価な機械を置いたまま、また壁に穴開けて壁掛けエアコンを付けることになる。物凄く勿体ない話になるので、やっぱり最初から、世の中がどう変わろうが多分無くならないものとして壁掛けエアコンを使った方が、長い目で見たら良いんじゃないですかと。先生がいつもおっしゃっていることですが、本当そう思うんですよね。
対談第一弾
Vol.1 日本の住宅基準はかなり遅れている
Vol.2 夏は入れない、冬は入れる
Vol.3 出木杉くんが嫌われる
Vol.4 日本の家は「裸にカイロ」
Vol.5 絶対に確認すべき3つの数値
Vol.6 安易な工法やシステムに騙されてはいけない
Vol.7 共働き夫婦の時短を考える
Vol.8 努力しない「ラーメン屋」は淘汰される