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プロが語る家づくり
 | 2019.07.21

Vol.3 出木杉くんが嫌われる

小暮:
今、ウチの会社はほぼ全てのお客さんが全館空調で、冬は床下エアコン、夏は小屋裏エアコンを使って家中を年間同じ温度に保っています。先生が開発されたあのシステムの最大のメリットって何でしょうか?

松尾先生:
僕が今、日本中でたくさんの工務店さんに講演や指導をしている中で、毎回アンケートを取っているのですが、日本の工務店さんで空調について一番多いのは、主寝室とLDKだけは最初から工務店がエアコンを付けるパターン。その次に多いのが、全て家電量販店任せのパターンです。

小暮:
あとはご自分で買ってくださいというパターンですね。

松尾先生:
そうです。それ以上は空調には関与しませんっていう会社が一番多い。でもそれって、車でいえば「左の後部座席はエアコンが効かないけれど、あとはオートバックスで付けてください」というのと同じ。そんな車は誰も買わないですよ。しかも車は乗っても1日数時間。それに比べて家にはどんな人でも最低10時間は居る訳です。しかも利用年数は40年。その空調がオプションだなんて、そもそもおかしいですよね。

小暮:
空調が無ければ実際暮らせませんからね。

松尾先生:
さっきも言ったように最低でもエアコンを2台は付ける人が殆どです。ということはエアコン2台分のお金は、どこの家も用意している訳ですよね。1台は20畳用、1台は8畳用というパターンが多いですが、ウチの場合今、1階が14畳用、2階は10畳用ぐらいでもう充分いけるんです。するとエアコンのコストアップは殆どない。それで全館が無理なく冷暖房できる。

小暮:
なるほど。

松尾先生:
最適な空調システムは、お金持ちの特権じゃなくて、誰もが享受すべき最低限の事だと僕は思っています。その観点から言えば、複雑な仕組みを使わずに、1階に床下エアコン、2階に小屋裏エアコンというシステムは、普及させることを考えても、すごく良く出来たシステムだと思います。

小暮:
本当に1台で冷えて暖まっちゃうんで、体験された皆さんはビックリされます。冬場でも21℃以上になっちゃうし、夏場も26℃とか27℃の辺りで保てるんですよね。

松尾先生:
「エアコンが嫌い」という一般の方もいらっしゃるし、あまり勉強してない実務者も「エアコンって嫌ですよね」と同調される方が結構います。けれどエアコンが嫌われる最大の理由は、はっきり言えば家の性能が悪いからです。例えば僕らが造っている住宅だと、冬に床下エアコンを回すのは基本的に夜だけ。朝の7時から夕方の5時までは、昼間の暖房はいらないのです。

小暮:
いらないですね。

松尾先生:
すると昼間にエアコンはついてないから、音も気流感も無い訳です。また、ついているときも、微運転しかしてないので、そんなゴーゴーとかビュービューみたいな風は一切無い。音だって非常に静かですし、全然不快感は無いんですよね。

小暮:
ないですよね。

松尾先生:
夏の小屋裏冷房にしても、24時間つけてはいますが、車で言ったら、ずっと5速の微速運転みたいな感じです。しかも遠くで1台回っているだけなので、感覚的に言うと本当に春とか秋みたいな感じです。ゴーっと冷気が攻めてくるみたいなことは全く無い。

小暮:
あの、ピッってやった瞬間ね、バーンって吹いてくるあれですね。

松尾先生:
あれは全く無い。空調というのは、暖房・冷房・加湿・除湿の4要素あって、そのうちエアコンは加湿以外の3要素を高い基準でできる非常に優れた空調機なのです。例えば冬に家電量販店に行くと物凄い種類の暖房器具がありますよね。

小暮:
ファンヒーターとか、セラミックとかの。

松尾先生:
はい。その中で一番燃費が良いのはエアコンなんです。

小暮:
そうですね。私も実際去年の冬に小さなセラミックファンヒーターを買ってきて、モデルハウスに置いて深夜に回してみました。確かに暖まるんですけど、ただ計算したら電気代が凄いんですよ。エアコンがどれだけ安いかが良くわかりました。

松尾先生:
電気代を計算するとエアコンがもう圧倒的に安い。しかも年間900万台も生産されている事もあって、性能の割に機械自体も非常に安い。

小暮:
そうですね、せいぜい10数万円くらいです。

松尾先生:
これほどお買い得な物なのに、嫌われている商品って多分無いですよね。

小暮:
それは家の性能がやっぱり悪いからなんでしょうね。

松尾先生:
そう。僕は「出木杉君が嫌われる」ってよく言うんですけど(笑)。エアコンのデメリットを一つ言うとしたら、使い方によっては、中にカビが生えること。ただし、家全体に生えるカビを、エアコンが肩代わりしてくれるという考え方も出来ます。

小暮:
なるほど、そうですね。

松尾先生:
エアコンを付ける事によって除湿が行われるので、家全体としてはカビが生えにくくなります。一方で、エアコンの中に結露水が溜まるのでカビが生える心配がある。ただ、現在はカビの除去機能が付いたエアコンがありますので、その問題もクリア出来ます。

小暮:
そうですね。体感しないと多分、分からないと思うんですけど、本当に14畳の床下エアコンと、小屋裏エアコンで、夏冬も快適に過ごせちゃうんですね。

松尾先生:
そうです。

小暮:
実際、電気代も節約できます。うちのお客さんの例では、夏中エアコンをずっとかけて、オール電化もやって、暑かった今年の8月の電気代が1万3千円ぐらいで済んだそうです。別の方はちょっと家が大きかったのですが、それでも1万6千円ちょっとです。決して高くは無いと思うんですよね。

松尾先生:
多分皆さん驚かれると思うんですけど、1台のエアコンを8月の間24時間ずっと回しっぱなしにして、家を27℃程度に保った時の1か月の電気代は4千円程度です。群馬のように暑い所は5千円いくかもしれませんが。1日で割ったら130円とか150円で全館冷房が出来ちゃうんですよね。アチーってビール一杯飲んじゃったら今もう300円とかしますから(笑)。

小暮:
しますよね。

松尾先生:
ジュースでも120円はします。暑いからとシャワーを浴びまくるとか、家族全員がそんな事やったらその方が遥かにお金がかかる。しかもホテルや軽井沢の別荘で過ごすような、爽やかな状況で過ごせるという事は、これはもうお金には換えられないですよね。

小暮:
全くそうですね。

松尾先生:
例えば夜、どんなに高級なエアコンを付けたとしても、一部屋に一台エアコンを付けると、やっぱり冷気が嫌な感じがして、かなり寒いと思うのです。

小暮:
部屋毎に温度差が出ちゃいますからね。あれが余計にちょっと気持ち悪い。

松尾先生:
エアコンにタイマーをかける方もいらっしゃいますが、タイマーが切れた瞬間にもう汗だくになって目が覚める。日本人ってただでさえ睡眠時間が少ないのに。逆に朝までかけ続けると寝冷えする。お金がかかり過ぎるのと、だるいっていうのと。どうやってもデメリットが残る。そういうのが全部無縁になるのはお金には変えられない価値だと思いますね。

対談第一弾

Vol.1 日本の住宅基準はかなり遅れている
Vol.2 夏は入れない、冬は入れる
Vol.3 出木杉くんが嫌われる
Vol.4 日本の家は「裸にカイロ」
Vol.5 絶対に確認すべき3つの数値
Vol.6 安易な工法やシステムに騙されてはいけない
Vol.7 共働き夫婦の時短を考える
Vol.8 努力しない「ラーメン屋」は淘汰される

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