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ホーム > ブログ > プロが語る家づくり > Vol.16 いつまでも美しい家のデザインとは
プロが語る家づくり
 | 2021.04.12

Vol.16 いつまでも美しい家のデザインとは

小暮:
最後に、いただいた質問で、松尾先生の考える家づくりのデザイン、空間という広い意味なんですけど、アドバイスいただきたいっていうのがあるんですけど。

松尾先生:
今日の質問で一番難しいですね。これまでは正直、性能を頑張っている工務店さんはデザインや設計が疎かになっているケースが結構多かった。性能がいいところはデザインがダサい。逆にデザインがいいところは性能がボロボロ。反比例の関係にあった。ところが今伸びている会社は、両方できている会社が多くなってきた。

小暮:
そうですね。

松尾先生:
まずデザインは引き算なんです。例えばApple社の製品が綺麗なのは、iPadでもiPhoneでも、やっぱり他社に比べて圧倒的に線の数が少ないんです。いらない要素を全部削ぎ落としているんです。これはスティーブ・ジョブズの根本的な考え方で、禅の影響です。例えば世界的に有名な安藤忠雄さんの建築も、基本的にコンクリートかガラスか鉄かみたいな、グレー1色みたいな感じですよね。無駄な要素を全部削ぎ落としているわけですよね。あとは立面を構成する上でも、揃えるところは揃える。ずらすところはずらすみたいな基本があるんですけど、残念ながら工務店で設計されている方ってそういう概念を全く持たずに設計をしている。お客さんから要望をヒアリングをしたら、それをそのまま間取りにして、平面もぐちゃぐちゃだし、構造形状もぐちゃぐちゃだし、屋根の形もぐちゃぐちゃだけど、それをそのまま作ってしまうっていうパターン。揃えるところは揃える、構造もしっかり整然と成立させて、屋根の書き方もシンプルにする、こういうところもデザインであり設計としてすごく大事なところですね。

小暮:
おっしゃる通りですね。

松尾先生:
あとは、外と中との一体感みたいなところ。僕らも全部の家に対して庭をしっかり作り込みたいんですけど、性能面も耐久性も庭もとなると、なかなか全部にお金を出し切れる人って少ないんですけど、その中でもできるだけやっていきたいというのが、これから10年間のうちの会社の勝負どころかなって思っています。あともう一個言うと、デザインって大きく分けると2つあって、お金のかかるデザインとお金のかからないデザインがある。高級なものを使って綺麗にするやり方と、設計の工夫で綺麗にするやり方と言ってもいい。例えば普通の三角屋根の住宅でも、その建物においてこれぐらいの方が綺麗なのかを追求しても金額は変わらないんですね。こういうことを徹底的に検証しているかどうか。お金のかからないデザインはどんな安い住宅においても全部やり込む。お金のかかるデザインは予算と相談しながら、どこまで攻めるかを考える。ことあたりは、すごく大事なところじゃないかなって思いますね。

小暮:
私も松尾先生に間取りをチェックしてもらう時に、高さをよく言われますよね。なんとなく日本人って天井は高い方が得みたいに考えがちですが、天井をどんどん高くすると、建物も高く間延びして、実際は格好悪くなる。

松尾先生:
あと、もう一個は素材ですね。フローリングの話がありましたけど、日本人って偽物に慣れきってしまっているんですね。例えば、偽ブランドの時計をしてたら、あいつフェイクなんか使ってダサいってなるのに、サイディングの話になったら、木彫のサイディングとかタイル調のサイディングとかでも平気ですよね。

小暮:
木彫のサイディングと本当の木は、見た時に全く違いますよね。

松尾先生:
全く違う。だから石は石、コンクリートはコンクリートみたいな。サイディングを使うんだったら、サイディングでも明らかにサイディングってわかるようなものを使えばいい。素材感を大事にするってことですね。特に30年40年50年使うってなったらすごい大事です。僕らもリフォームで古い家を見たりするんですけど、既製品を使いまくっている家って時代感が半端なく出ますよね。20年前ってこういう資材が流行ったよねみたいな。服でも流行り廃りがあるじゃないですか。その時代に特化しすぎるものを作ると、後で見てられないんですよね。あとは、やっぱりみんな30代半ばとかで家を建てて、その時の感性でピッタリくるようなデザインをやるんですけど、自分もいずれ65になり70になり80になっていくんです。あまりにも時代感のあるキレキレのシンプルモダンみたいな感じのやつをやると、それを80のじいちゃんが住むってなったときに耐えられるのかどうか。

小暮:
家の段差もそうですよね。すごいリビングに段差つけてね、かっこいいけど、実際80になったらね。

松尾先生:
家って今だけの話じゃないんで、普遍性がある方が長く住んでいてもあまり無理がないんじゃないかなって思うところですね。

小暮:
あと先生は色の使い方もよくおっしゃいますよね。色の種類とかね。

松尾先生:
建築家の世界では「3色以上使うな」とよく言われます。しかし、トイレはピンクのクロスを使って、水回りはブルーの水玉模様とかを使う人もいて、それもデザインは引き算という考え方の逆になるわけです。テクスチャーも色も少なければ少ないほど、いわゆる安藤忠雄さんのような建築家の方に近づいていく。

小暮:
形はどうですか?

松尾先生:
パッシブデザインで考えれば、夏涼しく冬暖かくて、トータルコストが一番安くなる形って、ちょっと東西に細長い長方形なんですね。それがベースにあって、でも敷地の形もバラバラだし、民家の状況もバラバラだし、そもそもお客様の間取りの要望もバラバラなので、そこからスタートしてどう変えていくかっていう話になるんですけど。小暮さんにも練習していただきましたけど、敷地があって隣家があって、最初に車の配置をどうやるか、それから建物の外形をどこにどういう形でやるかっていうのを考え抜いてから、それから中の間取りに入っていく。これがすごく大事なんです。僕だけじゃなくて「間取りの方程式」の飯塚さんも、必ず外のことを考えてから間取りをスタートしなさいって話をされますが、99%のプランナー、住宅の間取りを考える人はいきなり方眼紙を持ってきて、お客様の要望を聞いて間取りから入る。それをやると絶対理想的な設計って難しくなるので、脱却しないといけないところだなと思いますね。

小暮:
私の会社もですね、いきなり間取りを書いて、そこから図面にして窓をつけると、窓の高さと位置が合わないんですよ。自分でもずいぶん不恰好な家だなと思いながら。本当に窓の位置が理路整然と揃ってないと、変な家になりますよね。

松尾先生:
中は別におかしくなかったとしても、外から見た時に、すごいバランスが悪いことは多いですね。

小暮:
あと太陽光をつけたいのはわかるんだけど、妙に勾配が立っていて、後ろから見ると家が3階建てみたいになっちゃっている家もありますよね。

松尾先生:
やっぱり道路から見える面ですよね。見える面に関しては少なくとも綺麗に見えるように作るっていうのは絶対にセオリーなんです。見えない部分は別にそんなに重視しなくてもいいのかなと思うんですけど。

小暮:
長い目で見た時に普遍性があるというか、飽きない、自分が30年40年経った時も、これいい家だなって思える家を作ったほうがいいってことですよね。

松尾先生:
逆のことを言うと今、築30年とか40年の家で、今でも見ていられるなって家ってどういうのだろうって観点で、古い家を見てみるといいと思います。

小暮:
私もその話をメルマガで書きました。地元に木製サッシを使った木の家がありまして、この家は30年経ってもすごいなって思うんです。それをハウスメーカーさんの家と並べてみると、本当にわかります。ぜひみなさん、そんな感じで家を作ってみてください。

対談第三弾

Vol.1 Ua値やC値だけでは家の性能は語れない
Vol.2 太陽光発電は得か?損か?答えは明確
Vol.3 もしもの大災害は必ず起こると考える
Vol.4 住宅会社の営業トークは嘘だらけ
Vol.5 営業マンの嘘を見抜く方法
Vol.6 家を知らない人が家を売る怖さ
Vol.7 「断熱材で調湿」は「濡れた布団で寝る」のと同じ
Vol.8 窓と日射について抑えておくべき基本
Vol.9 営業マンより消費者の方が知識量は上
Vol.10 YouTubeの中にもたくさんの嘘がある
Vol.11 耐久性のポイントは耐震性と水害対策
Vol.12 おすすめできない製品・部材とは
Vol.13 カタログ数値に踊らされてはいけない
Vol.14 適正な断熱性能はこのように考える
Vol.15 30年先を考えたサッシの選び方
Vol.16 いつまでも美しい家のデザインとは