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プロが語る家づくり
 | 2021.02.27

Vol.7 「断熱材で調湿」は「濡れた布団で寝る」のと同じ

松尾先生:
やっぱりどこの大手住宅メーカーさんでも、日本の企業はほとんどそうだと思うんですけど、取締役になって決定権を得る人って結構50過ぎてからになると思うんですね。特に住宅メーカーって技術系の人よりも営業系の方がはるかに強いんですよ。55歳を過ぎている人がバリバリ全盛期だったのって30から45の間くらいなんですよね。その頃って断熱がどうのこうのって言われてなかったし、結構夜討ち朝駆けって言ってね、12時くらいでもすみませんうちでお願いしますっていうのも住宅業界ってやってたわけですよ。

小暮:
なるほど。

松尾先生:
その頃の成功体験が残っている人たちが、今の経営権を持っているわけで、でも現場とも乖離しているわけですね完全に。時代は変わってきているし。でも、工場のラインを今のまま使いたい、それから自分たちの成功体験がある、その状況で経営判断をしようとするから、例えば気密に関しても気密はいりませんよみたいなことを、いまだに言う営業マンがいるんですね。

小暮:
私のYouTubeにコメントで、高性能の家を建てたくてメーカーさんを回ったと。そこで気密性能についてどうなんですか?って聞いたら、「気密性能というのは過去の産物で、あんなものは国も今は規制しませんから全く意味ありません」って。

松尾先生:
確かに国の基準のところからC値っていうのは無くなったんですけど、だからといって意味がないのかって言ったらそれは全く違っています。皆さんも日本の政治家がやっていることは、全て正しいと思いますか?と問い直していただければわかると思うんですね。気密っていうのはいつも言うように、洋服で言ったら袖口をピッと閉めるとか、前を閉めるっていうことなんですけど、この間までは基準で冬はここを閉めなさいって基準がありました。でも2年前からここ閉めなくていいですよという法律ができました。だからと言って、過去の遺物だから閉めることに全く意味なんてないんだよと言う話ではありません。

小暮:
そもそも気密性能がちゃんとしてないと一種換気とかって計算通りにならないですよね。

松尾先生:
一種換気もきちんとならないし、三種換気なんかそもそも全然成立しないです。

小暮:
ですよね、前提条件ですよね。それなのに、気密性は気にしないのに、一方で一種換気の凄さを語ったりするじゃないですか。

松尾先生:
その場でお客様をごまかせればいいみたいな感じですね。でもそれは悪気がある人と悪気がない人はいると思います。本当に自分の言っている営業トークが正しいと根拠なく思っている人もいます。でも、ちゃんと結構勉強して、例えば今の時期それなりに今の時代の流れも分析した上で、しゃーないからわかって嘘をついている方もいらっしゃいますね。総じて住宅メーカーって、住宅メーカー同士の競合が多いので、例えば総合展示場に出ているメーカー同士の戦い方って結構知っているんですけど、せいぜい10社くらいしかないので。

小暮:
狭い中での戦いなんですね。

松尾先生:
25年くらい前からそうなんですけど、大手住宅メーカー同士の競合の場合、あそこと競合した時はこういうことをしなさいっていうマニュアルがあるんですよね。それに則って話をしているだけで、結構大手でもそれはないだろっていう、売れさえすれば何言ってもいいのかっていうトークをやっている会社っていうのも結構ありますね。

小暮:
うちのお客さんからもいろんなお話を聞くのですが、中には本当に何言ってるのかなっていうのもあります。気密を高めずに断熱材にどんどん湿気を吸わせた方がいいっていう会社があるって話も聞きました。

松尾先生:
それはちょっともう、すごいですね。

小暮:
調湿性のある断熱材を使って、それに湿気をどんどん吸わせたほうが室内環境が良くなるから、わざわざ気密なんて高める必要なんてないって。

松尾先生:
そう思うんだったらね、布団を濡らして寝てみてくださいってね。

小暮:
そうなっちゃうんですよね。どうみても寒いですよね。夏冷たいしね、冬は暖まらないしね。

松尾先生:
断熱材っていうのは乾いていて初めて断熱の効果を発揮するので、ダウンジャケットでも何でもズブズブに濡らしたやつ着てみてくださいと。熱環境工学というのは物理の一つの分野ですけど、物理を勉強してない人ってもう有る事無い事めちゃくちゃ言うんですよ。だから、このツボを買えば幸せになれますっていうのが20年、25年くらい前までいましたが、図式としてはあれとあまり変わらない。

小暮:
やっぱり人間って自分の気になるところを突かれちゃうと、なんかこう信じちゃうっていうところがある傾向はありますよね。コロナ禍でそんな人も増えているようです。

松尾先生:
だからやっぱり、普段からその根拠は何ですかっていう。今すぐじゃなくても根拠があるんだったら後日でもいいので見せてくださいと、そう言うと、すぐにボロが出ると思いますね。

小暮:
この断熱材を使うと家の中がカラッとしたとしますよね。でもその断熱材のおかげというよりも、たまたまエアコンがよく効く間取りだったとも、日射取得とかうまくいって室内の水分が飛んだっていうのもあり得ますよね。いろんな要素があるので、これを貼ればいいっていうのはないと思うんですよね。そんなすごいスーパーマジックなものに出会ったことはないですね。

松尾先生:
どの業界でもそうですけど、そんな次元を超越するくらい性能が違うものみたいなのはなかなかないですね。

小暮:
基本的なところをちゃんとやって、あまりにもマジックみたいなものを求めないと。必ず根拠を聞くと。

松尾先生:
それが鉄則だと思います。

対談第三弾

Vol.1 Ua値やC値だけでは家の性能は語れない
Vol.2 太陽光発電は得か?損か?答えは明確
Vol.3 もしもの大災害は必ず起こると考える
Vol.4 住宅会社の営業トークは嘘だらけ
Vol.5 営業マンの嘘を見抜く方法
Vol.6 家を知らない人が家を売る怖さ
Vol.7 「断熱材で調湿」は「濡れた布団で寝る」のと同じ
Vol.8 窓と日射について抑えておくべき基本
Vol.9 営業マンより消費者の方が知識量は上
Vol.10 YouTubeの中にもたくさんの嘘がある
Vol.11 耐久性のポイントは耐震性と水害対策
Vol.12 おすすめできない製品・部材とは
Vol.13 カタログ数値に踊らされてはいけない
Vol.14 適正な断熱性能はこのように考える
Vol.15 30年先を考えたサッシの選び方
Vol.16 いつまでも美しい家のデザインとは