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ホーム > ブログ > プロが語る家づくり > Vol.8 木造と鉄骨はどっちが丈夫か?
プロが語る家づくり
 | 2020.05.24

Vol.8 木造と鉄骨はどっちが丈夫か?

小暮:
次の質問です。これもたまに言われるんですけど、やっぱり木造よりも鉄骨の方が丈夫で良いんですかって質問です。これはどうですか。

松尾先生:
これも明快に一番分かりやすいのは。国が定める構造強度の強さとして、耐震等級というのが出てるんですよね。だから耐震等級で見るのが一番頭がすっきりすると思います。例えば鉄骨の耐震等級3と木造の耐震等級2があるんだったら、やっぱり鉄骨の耐震等級3が強い。でも木造の耐震等級3と鉄骨の等級2だったら、木造の耐震等級3の方が強い。

小暮:
ですよね。でもなぜかその人間って、鉄は強くて丈夫というイメージってありますよね。

松尾先生:
間違いなく。それは同じ断面の物を比べると、鉄骨の方が強いからです。例えば柱って120角とか多いですけど。120角の鉄の硬度と120角の木。これ強度どっちが強いかって言われたら間違いなく鉄の方が強いですね。ただ、木の柱は同じ断面だったら弱い分、120角が丸々中身が詰まってますけど、鉄骨構造の住宅が今度は120角全部鉄が詰まった柱になってるかっていったら?

小暮:
5ミリぐらい。

松尾先生:
せいぜい5ミリから10ミリ。中はもう空洞になっている。

小暮:
コラムですね。

松尾先生:
そうですね。H鋼というH型をした断面か、もしくは正方形をしたので建ってるというだけで。しかも本数も…。

小暮:
あれ飛んでますよね、少ないですよね数がね。

松尾先生:
物凄い少ないじゃないですか。これもさっきの断熱材の何を何ミリ使うかというのと似てますけど。木造というのは、断面当たりの強度は弱い代わりに、凄い断面積を使っている。鉄骨というのは断面あたりの割合が強い割に、結構断面積が少ない。だからそれも掛算で決まるみたいな話なので。耐震等級で判断してもらうのが一番良いですね。

小暮:
そうですね。なのでそういう基準があるので、耐震等級を基準にして選べばいいのであって、鉄が強いとかそういうのは関係ないということですね。

松尾先生:
そうですね。ただし、僕も2年程前かな。カナダで今現在、世界で一番背の高い木造ビルというのを見てきましたけど。あれ何階建てだったかな、14階建てだったかな。

小暮:
ああ、14階。14階まできたんですね。

松尾先生:
カナダって地震がないので、ああいうのができるんですけど。今日本でも4階建てくらいまでだったら全然普通に出来ますし。3階建てだったら普通どころか無茶苦茶簡単にカジュアルに出来ます。

小暮:
私も3階建ての木造を建てたことあります。別にそんなに難しくないですよね。

松尾先生:
4階建ては一昔前は出来なかったのが、今はもう全然余裕でできるようになりました。僕も1回木造の4階建てというのをやっています。

小暮:
あー、4階ですか。

松尾先生:
だから、日本でそりゃ5階以上を建てるんだったりとかですね。体育館みたいな…あ、でも体育館も今ね、木造の凄い。

小暮:
こんな梁でね、飛ばしてやりますよね。

松尾先生:
いけますから、余程の高層建築とかですね、余程の大空間みたいな場合は鉄骨じゃないと、そもそも成立しないというパターンがありますけど。まぁたかだか、大きくても60坪まで。

小暮:
2階建て。

松尾先生:
8割が40坪で収まるという木造住宅の世界において、鉄骨を使わなければならない合理的な理由というのは、基本的にはないかなと。ちょっと今はっきりとした数字覚えてないですけど、鉄というのは木に比べると1000倍から2000倍ぐらい、熱通しますので。

小暮:
熱伝導しますよね。

松尾先生:
物凄い熱的に不利なんですね。気密もやっぱり取りにくい。これ鉄骨メーカー、鉄骨系の住宅メーカーのUA値というのを見てもらえれば、もう一目で分かるんですけど。

小暮:
良くないですよね。断面構成も内断熱にして外断熱でこうやって凄いことまでやっても、結局HEAT20のG1みたいな感じなんですか。

松尾先生:
まぁG1が限界ですね。

小暮:
限界ですよね、あそこまでやってもね。

松尾先生:
そういう意味で、鉄骨はむしろ戸建て住宅においては不利。それを証拠に超大手住宅メーカー、某Sハウスさんでもどこでも徐々に木造比率が高くなっている。

小暮:
最近木造になってますね、比率がね。

松尾先生:
もうそれそうしないとやっぱり基準達成が難しい。

小暮:
一番最初に言った、国の省エネ基準がどんどん高まっていて、それに対してやっぱり残念ながら鉄骨というのは追いつけない、そんな時代になっちゃったということなんですかね。

松尾先生:
そうだと思いますね。

小暮:
別に大手メーカーさんの悪口を言ってる訳じゃなくて、事実として実際ある。鉄ってのはそういう物だという。ただまぁ、なかなか消費者の方のイメージは変えられない。なので、場合によっては考えた上で検討するのは良いですよという話ですよね。

松尾先生:
まぁこう言ったらあれですけど。某鉄骨系超大手メーカーの設計社員の家を設計したことありますね。

小暮:
え?そうですか、木造の。

松尾先生:
はい。

小暮:
これ、その大手ハウスメーカーさんの悪口じゃないんですよ。これお客さんが言ったんですよ、本当なんですよ(笑)。

対談第二弾

Vol.1 最低の断熱基準さえも義務化できない国
Vol.2 HEAT20 G2でも欧米では最低レベル
Vol.3 全館空調はメンテナンスコストに差が出る
Vol.4 太陽光発電はつけないと損をする
Vol.5 現時点では蓄電池より〇〇〇の方がいい
Vol.6 断熱材は 材質×厚みで考える
Vol.7 外断熱か、内断熱(充填断熱)か
Vol.8 木造と鉄骨はどっちが丈夫か?
Vol.9 大手はなぜ樹脂サッシを使わないのか?
Vol.10 住宅会社を見分けるチェックリスト
Vol.11 太陽に素直な設計
Vol.12 中古住宅リフォームの注意点

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