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プロが語る家づくり
 | 2020.05.01

Vol.1 最低の断熱基準さえも義務化できない国

小暮:
はい、皆さんこんにちは。子育て設計の小暮です。今日は松尾設計室の松尾先生の所に、第二弾の動画撮影にやって参りました。去年の7月にお届けした第一弾は、いろんな方に見ていただいて「すごく良かった」と評判でした。今回は、私のメルマガやYouTubeなどからいただいたご質問を挟みながら、また松尾先生にいろいろと解説をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

松尾先生:
はい、こちらこそよろしくお願いします。

小暮:
まず一つ目は、これは消費者の方はなかなかご存知ないと思いますが、2021年4月から省エネルギーが義務化になりますね。

松尾先生:
2019年の1月からなるはずだったのが飛んだんです。

小暮:
そうだ、飛んじゃったんですよね。2021年の4月から今度は「説明義務化」というのがスタートするらしいのですが、具体的にはどんなことなのかをちょっと松尾先生に解説をしていただければと思いますので。

松尾先生:
本来義務化されるはずだったレベルの性能が担保されてるか、されてないかを説明しなさいということです。満たしてない業者さんは「ウチの建物というのはそこまでの性能はないんですよ」ということを言わなければならないということです。その説明に関しては義務化になるんです。

小暮:
説明はね。

松尾先生:
はい。ただし、「じゃあそれは確認申請とリンクするんですか?」といえばそうじゃない。これ一般の方には分かりにくいと思いますが、確認申請が下りないと、住宅ローンが借りられないんです。だから、業者に対して強制力を与えるためには確認申請にリンクさせないと意味がないんですよ。ところが実際は、書類を提出する義務や誰かが確認するというのも一切ない。法律としては義務化されるけれども。それを強制する手段が何もないという形なんですね。

小暮:
例えば、建物の断熱計算をして省エネルギー基準にはなってないのなら、ちゃんとそれをお客さんに言いなさいよと。ただ、本当に説明したかどうか誰かがチェックする訳じゃないんですよってことなんですね。

松尾先生:
そうです。

小暮:
そうすると言わなくたっていいと?

松尾先生:
言わないとダメなんだけど、言わなくても何のお咎めもないということです。

小暮:
では消費者の方が説明してくれることが法律になってますよねということを知らないとまずいですよね。

松尾先生:
ですね。でもそんなことを知ってる素人の人がいる訳ないので。だからこれは上手いこと逃げたなって感じですね。

小暮:
そもそもウチの会社があなた様のためにつくった家が、省エネルギー基準に当てはまってませんのでって、こういう風に言う会社なんかいないと思うんですよ。

松尾先生:
そうでしょう。例えば今請け負い契約をする時に、建築士はですね、重要事項説明書というものを読みながら建築士のカードを見せなさいというのが、姉歯さんの事件以降、建築基準法で義務化されています。あれも義務化なんですけど、その様子をビデオ撮影して役所に提出しなさいとかそういうのないじゃないですか。

小暮:
ないですね。ウチもお客さんと契約の時に誰が設計して、誰が管理をしますって全部説明して判子押しますけど、別に確認申請に添付しませんもんね。

松尾先生:
そう。僕の個人的な感覚ですけど、今でもやってない会社はたぶん多いと思います。この動画を見た人は、「あれ!?って、私そんな説明受けてない」という人がたぶんいっぱいいると思うんですね。それと同じ様なことをしようとしてるというそういう感じですね。

小暮:
なんでこう、いい加減なんですかね。

松尾先生:
まぁいい加減といえばいい加減なんですけど、やっぱり義務化するというのを逃れたのは、姉歯事件があった時にですね、国交省は構造の基準を厳しくした。ただ、それによって確認申請が滞って社会的に大きな影響を受けて叩かれた。そのトラウマがかなり残ってるんじゃないかと言われてますね。だから、自分たちが叩かれない様にって思っているんじゃないかと。

小暮:
国の基準といえば、他にもいろんな基準がありますよね。例えば断熱基準って平成11年度とか、平成25年度とか、28年度とか、次世代の省エネ基準とか、省エネ等級4とかね。いろんな言葉がある。住宅会社さんのチラシを見ても、おそらく消費者の方は何が違うのかわからないと思うのですが。

松尾先生:
要するに基準というのは理想的な住宅を建てるものじゃなくて、最低レベルを担保するためのものなんですね。国によっては極めて高いレベルを担保することを目的にしてる国もあるんです、例えばドイツみたいなね。でも日本の場合は本当に最低レベル、それを切ったらまずいですよという所に基準がある。例えばそれは平成11年基準というのが出た時に、次世代省エネ基準と呼ばれました。その後平成25年基準、平成28年基準と出てきたんですけど、正直微妙な箇所は変わったかもしれないんですけど、中身は一緒なんですよ。

小暮:
確かQ値で2.7とかですよね。

松尾先生:
そういうことです。Q値で言うと2.7、UA値で言うと0.86かな87か。

小暮:
0.87ですね。

松尾先生:
今いった、平成11年、25年、28年、それから次世代省エネ基準、後は温熱の等級4ってぜんぶ0.87ですね。今5つぐらい言ったんじゃないかな。これは全部同じものです、基本的には。

小暮:
今令和2年ですよね。平成11年っていえば20年以上前ですね。

松尾先生:
はい。僕はもうその頃から高断熱住宅やってますから、当時としては結構な断熱性能だったという印象を覚えてるんですけれども、いまだにそれを次世代って言ってるというのがこの業界の面白いところですね。実際は前世代、前々々世代ぐらいの感じですね。

小暮:
それをまたチラシで最高等級とか書いたりするじゃないですか。

松尾先生:
まぁそこまで悪質な業者さんは最近は減ってきたかなと思いますが、基準クリアって謳ってる会社は今でも多いですね。

対談第二弾

Vol.1 最低の断熱基準さえも義務化できない国
Vol.2 HEAT20 G2でも欧米では最低レベル
Vol.3 全館空調はメンテナンスコストに差が出る
Vol.4 太陽光発電はつけないと損をする
Vol.5 現時点では蓄電池より〇〇〇の方がいい
Vol.6 断熱材は 材質×厚みで考える
Vol.7 外断熱か、内断熱(充填断熱)か
Vol.8 木造と鉄骨はどっちが丈夫か?
Vol.9 大手はなぜ樹脂サッシを使わないのか?
Vol.10 住宅会社を見分けるチェックリスト
Vol.11 太陽に素直な設計
Vol.12 中古住宅リフォームの注意点

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