小暮:
そこで今度は、だから外断熱なんですって話をする人がいる。内断熱はダメだと短絡的に言う業者さんもいるらしいです。お客さんによっては「外断熱の方が内断熱より良いんですよね」って聞いて来られる人もいらっしゃるんですが、外断熱の方が絶対良いんでしょうか?
松尾先生:
構造躯体が鉄骨もしくは鉄筋コンクリート造であれば、外張り断熱の方が絶対に良いですね。
小暮:
鉄骨とかRCだったら、逆に外張りじゃないとまずいんじゃないですかね。
松尾先生:
まずいですね。まずやっぱり、触って冷たい物というのは、断熱性能が悪いんですね。鉄とかコンクリートという、冬触って冷たい物というのはそれは、外からくるんであげないと。断熱的にも非常に悪いですし、僕らは専門用語で熱橋っていいますけど。
小暮:
熱橋ね、熱がこう逃げちゃうというね。
松尾先生:
熱がそこを中心にダダ漏れしてしまうという話ですね。それとあとは結露が起こる可能性がある。熱はいろんな方法でカバーできるかもしれないですけど、やっぱり結露が起ってしまうので、基本的に鉄骨・鉄筋コンクリート造の場合はやっぱり外断熱が良いですね。
小暮:
木造はそうではないと。
松尾先生:
木造の場合は、木材自体が一応弱い断熱材ぐらいの効果がありますので、必ずしも外断熱じゃないといけないという理屈はありません。
小暮:
後はまぁ地域にもよりますよね。結局何でもかんでも外断熱じゃなくても私は良いと思うし。
松尾先生:
外断熱だけでいけるのかって言ったら、本当に理想的な断熱でいくと、今大きく分けると世の中、外断熱だけという会社と、それから充填断熱だけという会社があります。
小暮:
壁の中だけね。
松尾先生:
これは壁の柱と柱の間の厚みの中でパンパンに入れる会社もあれば、半分の会社もありますけど。それを充填断熱っていいます。一番ハイスペックなのは、充填断熱プラス外断熱というのもある。これを業界内では付加断熱って言い方をします。充填だけと外だけで比べたら、一般的には充填だけの方が圧倒的に多いです。充填の方が安くできるというのと、充填でマックス12cm詰めれるので、安い断熱材でも12cm詰めれば、結構それなりの断熱性になるんです。
小暮:
ウチがそうですね、ウチが12cmなんですね。
松尾先生:
外張りだとだいたい50ミリくらいですよね。
小暮:
多いところでも75ミリくらいですね。
松尾先生:
寒冷地などで超高断熱をやっている所だったら100ミリ以上やる所もありますけど。まぁ世の中で軽やかに外断熱って言ってる会社って、大概が45ミリまでだと思います。45ミリだけだと、正直断熱性としてはグラスウールでいったら9cmから10cm換算。
小暮:
わざわざそんな高い物を45ミリ外に張るんだったら、内断熱した方が良いんじゃないかという。
松尾先生:
断熱性能がまったく同じで充填断熱と外断熱だったら、外断熱の方がコスト的にたぶん、余分におそらく50万から100万掛かります。後はそうですね、内部結露リスクは…。
小暮:
ああ、外断熱だと熱橋は減りますもんね。確かにね。
松尾先生:
そうですね。熱橋が少し減るというのと、内部結露リスクは、外張り断熱の方がほんの少し有利になる。それは事実としてあります。
小暮:
ただそんなに変わんないですよね、実際はね。
松尾先生:
そうです、でもじゃあそれが、50万から100万の差の価値があるのかって言われると、ないなという感じですね。
小暮:
私も松尾先生に解説をしてもらったので、よく分かったんですけど。世の中には、大変失礼ですけどね、外張りをすれば熱橋が減るから、家の中がものすごく暖かくなって結露もしないと思い込んでいる人がいる。
松尾先生:
外張りかどうかじゃなくて、それはやっぱり断熱性能です。熱貫流率という言い方をしますけど、断熱材の何を何ミリで使っているかということが大事なんであって。充填なのか外なのかが大事って訳では決してないです。
小暮:
よく断面構成でありますね、計算の、結露判定のやつですね。結局あれなんですよね。
松尾先生:
はい。だから、何を何ミリ使ってるかで導かれるのが熱貫流率というもので、値が小さければ小さい程良い訳です。何を使ってるという所だけで、何ミリかを一切言わずに、だからウチは高性能なんですとかいう会社は、ほぼまったく意味がないですね。
小暮:
でも、消費者の方ってそういう情報って物凄く分かりやすいと感じてしまう。
松尾先生:
分かりやすいというか、まぁまぁね。
小暮:
なので大変失礼な言い方だけど、この辺は中途半端に勉強している方が陥りがちな罠かなと。この前も私、動画でお話ししたのですが、「何使えば良いんですか?」「これです!」という単純な図式は大変危険なので、ぜひ気をつけていただきたいです。
対談第二弾
Vol.1 最低の断熱基準さえも義務化できない国
Vol.2 HEAT20 G2でも欧米では最低レベル
Vol.3 全館空調はメンテナンスコストに差が出る
Vol.4 太陽光発電はつけないと損をする
Vol.5 現時点では蓄電池より〇〇〇の方がいい
Vol.6 断熱材は 材質×厚みで考える
Vol.7 外断熱か、内断熱(充填断熱)か
Vol.8 木造と鉄骨はどっちが丈夫か?
Vol.9 大手はなぜ樹脂サッシを使わないのか?
Vol.10 住宅会社を見分けるチェックリスト
Vol.11 太陽に素直な設計
Vol.12 中古住宅リフォームの注意点