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 | 2025.07.15

保管してある材木を使えばコスト削減になるか

今回のテーマは、保管してある材木を使ったらコスト削減になるかどうかについてです。先日、下田島モデルハウスにお越しいただいたお客さんから相談をいただき、こういうこともあるだろうなと思ったので、お話しします。

この相談者さんは40代の方なんですが、ご実家の建て直しにあたって、親父さんが材木屋さんから買った材木を使いたいと考えているそうです。「もう商売上がったりだからやめるんだ。」「後継ぎがいないからやめるんだ。」など、いろんな事情があって商売をやめる材木屋さんから、「いい材木を持っているんだけど、捨てるのももったいないし、売っても二束三文だから使わない?」と言われて、買い取ったんでしょうね。

以前に設計事務所さんに相談をしたところ、その設計士さんがご自宅に来られて、材木の寸法を拾ったり、材質は杉だという風にチェックをされたりしたそうです。その後、間取りを書いたかどうかまでは聞きませんでしたが、それで終わってしまったんでしょうね。

率直に言って、その材木を使って家を建てることは不可能じゃないと思います。ただ、場合によっては金額が高くなるかもしれません。なぜかというと、材木屋さんに在庫としてあったものは、集成材ではなく無垢だと思うからです。集成材は無垢より高いこともあるので、わざわざ発注して在庫として持つ人はほぼいません。また、集成材は工場で作るオーダーメイド製品のようなものなので、わざわざ「余っているから買わない?」と言う人はいないはずだからです。

とはいえ、ずっと置いてあって乾燥しているから、強度が出ていていい材木かもしれませんが、今の家づくりは昔とは違います。今の家づくりは、お客さんに要望を聞いて、間取りを作って、構造計算をします。どんな材木を使うとどういう結果になるか、強度はどうかという感じで、設計を元に材料を手配していきます。昔は厳密な計算はしていなかったので「こういう材料があるんだけど、こういう風に使えないか?」という感じで、ある材料を上手く活用しながら家を作っていました。なので、そこには理論的な根拠はなかったわけです。あくまでも大工さんの経験や勘によって「こういう風に使えばいいんじゃない?」という感じでした。

また、昔は断熱や気密がどうだということは考えていなかったし、窓にも規格がなかったので、木が多少曲がっていても何とか納めていました。今そんなことをしたら断熱も気密もなくなってしまうし、そもそも施工しづらいですよね。だからといって、昔みたいに大工さん1人で、1年に1棟をじっくりと作って「できました!」という風にやっていたら、とんでもないコストがかかりますし、そんなことをやれるのはとんでもないお金持ちぐらいなので、現実的ではありません。

ちゃんと製材されていて、ちゃんと強度があるものを使って、適材適所に設計に基づいた柱を配置して、それに対して既製品のピシッと寸法のあった窓をつけて、断熱や気密を確保するのが今の家づくりです。そうなると、置いてある材木は、おそらくそれに適さないと思います。それでも使うという場合は、古い材木を製材所に持っていって、形を整えることが必要になります。あとは、そもそも長さが適用するかどうかという問題もあります。

化粧で1本使いたいとか、構造とは関係なしにパコッと組み込むということなら、ちょこちょこと加工しても面白いですよね。ただ、それを全部使って構造体で家を作るというのは、ほぼ無理かなという感じがします。対応してくれる職人さんもなかなかいないんじゃないかと思います。

個人の大工さんだったら、自分の仕事場に持っていって対応してくれるかもしれません。その代わりすごく手間がかかると思うし、どのぐらい請求されるかはわかりません。「趣味でやっているからいいんだよ!」「そんなに儲けるつもりはないから!」という方もいるかもしれませんが、今はそういう大工さんはほとんどいないでしょうね。

もっと言うと、そういう大工さんに断熱や気密、耐震性や構造計算がどうだという要望を出しても「何だそれ?」という話になると思います。結局はどっちを取るかです。「私は古材を使ってじっくりと作ってもらいたいから、断熱や耐震性というところは気にしない。」「お金がかかっても仕方がない。」という考え方なのであればいいと思いますが、今の若い方や勉強されている方にとっては難しいはずです。住まい方やお金の問題を含めて、許容できる方はいないんじゃないかという感じがします。

じゃあその材木はどうするのかというと、さっき言ったように化粧で使うとか、もしくは使えないからそのまま放っておくとか、燃やしちゃうとか、薪にして販売するしかないと思います。

私の爺さんの時代には、材木を少しずつ買い集めていって、ある程度溜まったら家を作ろうという風に、3〜4年越しで計画する人もいましたが、今はなかなかそういう人はいません。材木を置いておく場所がないというのもありますが、無垢の強度はよくわからないという事実もあるので、難しいです。

無垢というのは乾燥具合によっても、芯持ちかどうかによっても耐久性が変わってくるので、構造計算が成り立たないということがあります。私自身、無垢を使うこともあるし、決して無垢否定派というわけではありませんが、あくまでも化粧で使うのであって、がっちりと構造計算をするためのものとしては使えません。

ヨーロッパとか、日本でもそうですが、家づくりはやっぱり集成じゃないと成り立ちません。無垢だと強度計算はできないので、なかなか難しいというのが事実です。ただ無垢でも、徹底的に乾燥度を管理したり、強度に関してもヤング係数を管理したりして出荷している材木屋さんもあります。そこまでやるとなると、それなりにコストがかかるし、管理の手間もかかるので、現実的には厳しい感じがします。

その方は親父さんと相談しますとのことで帰られましたが、その後ご連絡がないので、もしかしたら「どうしても無垢で建てたい!」と、他の工務店さんに相談に行かれたのかもしれません。あまりない問題だとは思いますが、こういうことはまだあるんだなと、久々にびっくりしました。何かの参考になればと思います。