今回のテーマは、北欧テイストの家づくりと日本の環境についてです。
以前YouTubeに、ヨーロッパ風の家を建てたいという方からコメントをいただきました。ご自身でいろんな勉強をされた結果、「そもそもああいう家は通気しないんじゃないか。」と感じたそうで、実際にそういう家を作っている工務店さんに聞いてみたところ、案の定「通気については別に考えていません。」と言われたとのことでした。
一方、ヨーロッパ風のお家を建てて住んでいるという別の方からメールをいただきました。冬は暖かいんですが、夏はなかなか湿気が下がらず本当にしんどいので、何かいい方法を知りたいとのことでした。前者と後者は全く違う話のように聞こえるかもしれませんが、実は根本的には同じ話です。
そもそもこの2つの家は、日本の気候に合っているかどうかという問題があります。おそらくそういう家は、北欧などの寒い地域で建てる設計になっています。そういう家を日本に建てるのは、デザインとしてはたしかに面白いかもしれません。ただ、家というものは断熱、気密、通気、日射取得、日射遮蔽など、いろんな要素を考えて建てなければいけません。
北欧は乾燥していて、日射取得がなかなかできません。一方、日本は本州に限らず、北海道でも亜熱帯化していて、湿気が多い感じになっています。なので日本は、北欧よりも東南アジアに近い気候になっているのが事実です。東南アジアの家と北欧の家は、全く違います。窓のつけ方も軒の出方も違うのに、これらを逆転して住むのはおかしいですよね。東南アジアの家を北欧に作ったら寒くていられないし、北欧の家を東南アジアに作ったら暑くていられないと思います。
当社のモデルハウスの改修結果からもわかるように、高断熱化することで冬には有利になりますが、夏には不利になることもあります。特に湿度が高いところは不利になることが多いです。西の巨匠もおっしゃっているように、高断熱化することで夏の不快感が増してしまうので、地域に合わせた家を建てる必要があります。日本は春夏秋冬がありますが、北欧は寒くて乾燥していて、日射取得量もそんなに多くありません。なので、それぞれに適応した屋根の形や窓のつけ方、断熱や空調の仕方があるわけです。そうしなければ、何かしらの問題や不都合が起きてしまいます。
高断熱化した家を本州に持ってきても、夏の空調が上手くいかなければ、おそらくカビが生えるし、不快感も覚えると思います。ただ、そういう家を作られた方に悪気があるわけではなく、むしろ「高性能で北欧でも対応するような家を作ったのに、何でそうなっちゃうの?」と思うはずです。でも難しいのが、いいものだからといって対応できるわけではないということです。高断熱化するのはいいことかもしれませんが、デメリットも必ずあるわけです。
決して○条工務店さんの家が悪いわけではありませんが、○条工務店さんの家は、熱損失を抑えて床暖房で暖めることが主目的になっているので、夏の空調についてはそんなに重要視されていません。ヨーロッパではなく日本で作る家となると、それではなかなか難しい気がします。
それでもそういう家が欲しい場合は、機械で何とかするしかないと思います。日射遮蔽がどうだとか、通気や棟換気がどうだという話をしても対応できないはずだし、そもそも設計が違うので、それに合うような金物もありません。なので、それを許容して住んでいくしかありません。日本の気候には合いづらい設計のもので建てたら、どうしても不具合が生じる可能性はあります。これも家づくりの優先順位というところだと思います。
当社の家も、一般的な家とは違います。無垢の床を使って、珪藻土を塗って、杉板を張って、日本の気候に合わせていますが、一般的な家はサイディングを張って、コロニアルを張って、一般的なフローリングを張って、ビニールクロスを使っていると思います。なので、当社の家を見た方の中には「後で凹んじゃうんじゃない?」「これは剥がれませんか?」「これは腐っちゃうんじゃない?」と思う方もいるかもしれません。でも、それぞれにメリットもデメリットもあるので、結局はそれをどう許容して住むかというところだと思います。
日本ほどいろいろな家のある国は、他にないはずです。ヨーロッパ風、モダン風、スパニッシュ風、地中海風、純和風というように、多種多様な家が混在している風景はなかなか見られません。また、個人が住む家に鉄骨を使う国も、他にないと思います。日本では鉄骨を使うことが家づくりの方法の1つとして確立されていますが、ヨーロッパやアメリカでは「何でそんなことをしているの?」という話になるんじゃないかと思います。
日本では、結婚式は教会でやって、お葬式はお寺でやるというのが一般的ですが、なかなか変わった国だなと思います。いろいろバラバラだなとは感じますが、それがよく言う、日本人のこだわりのなさというものなのかもしれません。でも私は、生活環境においてはこだわる必要があるという風に感じます。今は気候の変化が激しいので、環境に適応しない家を作ったら、違う問題が起こっても仕方がないんじゃないかと思います。そういうことも加味しながら、家を建てることをオススメしたいです。