今回は、通気について解説します。YouTubeやメルマガで既に何回もお話ししていますが、通気というのは暑さや寒さの問題はもちろん、家の耐久性というところにも関わってきます。
車で例えると、オイル交換やブレーキパッドの厚さみたいな感じです。いくら洗車をしていたとしても、ホイールが真っ黒で、ブレーキパッドがすり減っていて、エンジンオイルを5年も交換していないという車は危ないですよね。でも車好きでない限りは、そういうことを気にする人はあまりいないと思います。日本では車検制度が2年に1回あるので、メーカーの方がオイルの量などをチェックをしてくれますが、車検制度がない国だったら、オイル交換を10年以上していないという車もあると思います。そうすると、場合によってはエンジンが壊れたり、ブレーキパットが削れていたら、踏んでも止まらないということが起こります。それらと同じというわけではないですが、通気というのは見えにくいものだからこそ、取られているのと取られていないのとでは、家の耐久性が全く違ってくるということです。
年配の方は、「昔はそんなことは気にしなかった。」と言いますが、そもそも昔の家は隙間だらけで、断熱材も入っていないから、通気が取りやすかったという事実があります。また、ストーブを炊いて湿気が出てきても、水分が飛ぶことで木が乾燥していたので、家を維持できていました。でも、さすがにそれだと寒いですよね。そこで、断熱材というものを入れましょうという話になったけど、今度は通気がストップして、木が腐ってしまったというのが北海道の断熱の歴史です。ではまた元に戻そうということで断熱材を取ってしまったら、当然寒くなるし、エネルギーコストもすごいことになります。
あとは、人間自身の体力の問題もあります。昔の方は寒くても、どてらを着て火鉢で暖を取っていましたが、今の若い人に同じことをさせるのは無理があります。なので、やっぱり今更、断熱材を剥がすことはできません。だから、風を通して乾燥させる必要があります。そうしなければ、鉄骨は錆びて、木は腐ってしまいます。鉄筋コンクリートの場合は腐らないし、表面的には錆びないけど、結露がすごくなるし、クラックができてきます。また、コンクリートがボロッと剥がれてしまうこともあります。
この動画を撮影した日は東京の事務所を借りたため、熊谷駅から新幹線に乗りました。トンネルは、私が子どもの時からあるはずなので、できてから50年ぐらい経っていることになります。だから、トンネルの壁は補強をしてあります。コンクリートの躯体はクラックが入っていて弱いので、そこの部分を削って、エポキシの高強度モルタルみたいなものを注入しているような感じです。そうしないと維持できないし、壊して作り直すのはとても大変なので仕方がないですが、日本のインフラはこれからどんどんそうなっていくのが目に見えています。
今、ガルバリウムが外壁材として流行っているそうです。サイディングよりもお洒落だし、耐久性もあるし、メンテコストもかかりにくいので人気があります。サイディングに関してもピンからキリまであるので、建売メーカーさんが使っているものと、お洒落な高コスト系のものとでは、金額が変わってきます。一般的にはサイディングとガルバを比べても変わらない感じだけど、ガルバは納め方が難しいという面があります。窓周りや開口部や屋根の取り合いには、ガルバを折って水切りを回しますが、コストを削減した場合、コーキングが切れたら水がバーッと入ってしまいます。そんなことは消費者の方にはわからないので、業者にお任せすることになりますが、とても怖いと思います。
そういった中で、下記の質問をいただきました。
「いつも動画を楽しく拝見させていただいています。先日新築した我が家は、通気工法は横胴縁で、ガルバの波板の縦張り。なおかつ横胴縁は一切隙間がなく1周しています。現場監督に尋ねると、“縦張りのガルバ自体は波を打っていて、波の部分で通気するから大丈夫ですよ”とのことでした。自分なりに調べても、この施工で良いと判断すべき根拠となるソースは見つかりませんでした。その時の現場監督の説明に納得してしまった自分にモヤモヤします。我が家の施工は通常行われているものなのかどうか、教えていただきたいです。」
率直に言いますと、この工法をやっている会社は多いと思います。間違っているわけではないし、アウトというわけでもないです。極端な話、ガルバの波板を1周グルッと張ればスースーと抜けるので、胴縁はちゃんとやっていても、軒ゼロで上が寸詰まっているところよりはいいのかなと思います。ただ、気になるのはガルバの波板の高さです。使うものにもよりますが、大体は9mmぐらいです。波が連続しているから、9mmであってもそんなに事故が起こる可能性はないと思うので、そこは心配しなくてもいいのかなという感じはします。そうは言っても、通気の推奨は大体15mmというケースが多いので、そう考えると9mmというのは少ないのかなとも思います。
他の動画でも言ったように、横胴縁の空いている隙間が2mおきに◯cmとかとなると、実際にはそんなに風は流れません。家を建てる場所は、郊外みたいに風がスーッと流れるところもあれば、都市部みたいに囲まれちゃっているところもあるので、全く風が流れないところというのも当然あります。どんな場所でも通気をさせてあげるには、目いっぱい風を抜くとしか言いようがないです。でも、そういう視点で物事を考える人はなかなかいません。
私は変わっている方の人間なので、「これで通気できるのか?」「建てる場所はそれぞれ違うよね?」と思いながら現場施工をしてきました。なので、西の巨匠さんが言ってることはすごく腑に落ちました。国の規定がどうだという話はあるけど、現実的に考えて「建てたらこうなると思わない?」と言いたくなります。全ての面から垂直に均等に風が来るなんてことはあり得ません。家は動く場所に建っていないし、建てた場所の周りの環境はそんなに変わるわけではありません。その中で風を抜けさせるとなると、場合によっては壁の中で風を回すとか、そういうイメージが必要になります。
軒天に、穴がポツポツ開いている軒天ボードというものを貼って、そこから棟換気をすることがあります。この穴が開いている面積が、軒の長さの1/◯という国の規定があります。軒天ボードをつける位置までは決められていないので、両端に1枚ずつつける人もいるし、真ん中に2枚つける人もいます。大体は施工する人の感覚でつけるけど、それだと風が流れないというケースもあります。こういうのは、法律がどうなどという話ではなく、現実的に考えなければならないことだと思います。
いずれにしても、通気というのはそういうイマジネーションが大事です。ついていればいいわけでもないので、ぜひこういうところも視点として考えていただきたいです。また、「ついていればいいんじゃない?」と言う会社や工務店さんは、決して悪いわけじゃないけど、特に若い方で長く家に住むという場合、その工務店さんはどういう考え方なのかというところも含めて考えて、業者選定をされた方がいいと思います。