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 | 2024.03.05

①軒ゼロは甘い!軒マイナスの家もあった②外壁がグリーンになりやすい家の条件③蓄電池を搭載する前に行うべきこと④大手ハウスメーカーの受注が激減している⑤高性能規格住宅は安いのか⑥発注ミスが起こりやすい家づくり

今回は質問コーナーです。

1つ目は、「蓄電池が合う家と合わない家」「一条工務店の樹脂窓がペアガラスだった」という動画に対してです。「一条工務店」というワードに反応した人が多かったようで再生回数が多くなっていますが、私としては何でなのかな?という感じです。もっと他に見た方がいい動画があると思います。

世の中の一般的な家づくりを考えている人が興味のある動画と、プロが見た方がいいと思う動画は違うということだと思います。そして、動画の再生回数や登録者数を増やすには、私の理屈ではダメということです。

その中で次のコメントがありました。

「軒ゼロでペタンコ屋根が、温熱環境や躯体保護にデメリットがありすぎる家であるのか、改めて共感しました。施主の指示通りに建てるハウスメーカーもあるでしょう。狭隘な土地であるがゆえにこれを選択せざるを得ない施主もいるでしょう。私なら屋根の断熱材を最低40cm敷きこめる高さ、屋根面通気と防水が確かな役物等を選択し、正確に施工できるハウスメーカーを選びます。」

都心だとどうしても狭くて軒が出せないから、軒ゼロになるのは仕方ないと思います。ただ、軒ゼロにすることによるデメリットは必ずあります。

例えば換気をどうするのか、暑さ対策はどうするのか、そもそも使う外壁はどうするのかなど、他の手段を考えたらいいんだけど、そういう家なのに何でこれを使うの?という会社が多いと感じます。

これは言うとまずいかもしれませんが、群馬県に数年前から、東京の大きな建売会社さんが来ています。太田市のネーミングライツ(命名権)を買って、バスケットコートがある施設の命名をしている会社があります。その会社の作る家が、軒ゼロというより軒マイナスという感じで、軒が凹んでいるんです。

東京で家を作っていた会社が、狭いところで家を作る手法のまま太田市に来たわけです。太田市はそんなに狭くないし、十分に敷地は空いているのに、すごく苦労して収めてる感じに見えます。なぜそういう手法を維持するのかと思います。

軒ゼロぺったんこ住宅は、軒が出ていない分外壁が塗りやすいという点はあります。この動画を見たことがない人もいると思うので、一旦整理してみます。

窓が1階と2階に、南側・北側にそれぞれある家を考えます。軒ゼロぺったんこ住宅の怖い点は、夏の日射が窓からすごく入るから、室内が暑くなりやすいことがまずあります。その対策として、南側に庇・アウターシェード・遮熱カーテンなどをつけます。

暑さの問題よりも怖いのが、空気の入り口・出口が作りづらいことです。屋根裏は特に空気を出し入れしないと、夏は暑くなってしまいます。

また、軒ゼロのこういう住宅は、コストを抑えるために作る会社が多いと思います。仮に気密性能は上がっても、断熱性能・気密性能はそこそこというケースも多いと思います。

その中で冬に暖房を炊くと、暖かい空気がは上に上がります。暖めると乾燥するから、今度は加湿をします。そうすると、暖かい湿った空気がどんどん上に上がります。

こういう家は天井断熱が多いので、断熱・気密が薄いとこれを貫通して、屋根裏に暖かい湿った空気がどんどん溜まります。通気をしないと屋根の野地の裏側に水分が張りついて、カビが生えたり放射冷却で屋根が冷やされて結露したりします。

さらにコストを抑えるために窓をアルミ樹脂にしていると、気密が取れにくいので、煙突効果と言って、暖かい空気が上がっていくために、窓から冷たい空気を引っ張る現象が起きます。すると、冷たい空気が足元に来て寒いから余計に暖めて加湿して、暖かく湿った空気屋根の辺りに溜まるのを繰り返すので、よろしくありません。

また、軒がないから入る断熱材の量が少なくなってしまうこともあります。すると夏に太陽に照らされて、屋根裏の空気が暑くなります。屋根断熱が薄いと暑さが室内に貫通してしまって、冷房をかけても足元が冷えて頭は暑い、となって不快になります。

熱・換気の問題以外にも問題があります。軒がない家の北面の外壁は、すぐグリーンになる傾向があります。軒がないと放射冷却で外壁がすごく冷やされるからです。

冬に車を停める際に、カーポート屋根の下とカーポート屋根がないところでは、朝の窓ガラスの結露具合は全然違うと思います。カーポート屋根の下に停めるだけで、車が冷えにくくなり、水滴もつきにくくなり、窓ガラスも凍りません。夜の放射冷却のせいですが、これと同じ現象です。

ちゃんとした屋根になっていれば、放射冷却が来てもある程度の部分は守れて、下の方だけグリーンになります。これが軒ゼロになると、外壁の裏側が全部グリーンになります。

理由はカビの問題もありますが、壁の断熱が薄くて冷えたり気密が取れていなかったりすると、家の中で暖めた空気が壁に引っ張られて、壁体内結露を起こすことが考えられます。

決して軒ゼロ住宅のことを否定はしませんが、そういうことは起こりやすいです。ちゃんと断熱をするとか、外壁もサイディングよりもガルバリウムにした方が傷みにくいしメンテナンスがラクだとか、ちゃんと通気を取るとか、屋根は天井断熱よりも屋根裏の付加断熱の方がより効くとか、やり方があると思います。

私の知っている工務店さんでも、都心の方で軒ゼロ住宅を作られている方がいらっしゃいます。そういう方はちゃんと断熱方法を変えています。

狭い天井に後ろからなんとかグラスウールを突っ込むのではなく、そもそも上から付加断熱をするような感じでやっています。そういうところも含めてやった方がいいと思います。

次も同じ動画に対していただいたコメントです。

「高価な蓄電池を使わず太陽光発電の自家消費割合を増やすことにより、コスパよく光熱費を抑えられると思いました。おひさまエコキュートのように、夜間に行っていた電力消費を日中に行うよう生活習慣を変えることを、家の建替え計画と併せて妄想しています。例えば、日中はエアコンを強めに動かして日没時間帯は止める(家の蓄熱・蓄冷に頼る)、調理や洗濯を日中に行っておく、などです。」

本当にその通りです。蓄電池は決して悪いわけではないですが、割に合わないのは事実です。それよりまず家の性能を上げて、冬は日射取得で家を暖められて、夏はエアコン1台で冷やせるようにする方がいいです。あとは、おひさまエコキュートで日中に作った電気でお湯を沸かす等です。

当社の場合は全ての家がおひさまエコキュートになっています。何百万円もする蓄電池を買うよりも、それが先だと思います。

蓄電池に関してはこの動画でも言いましたが、これから全固体電池がメジャーになると、蓄電池もまた変わってくると思います。コンパクトになって、金額も下がって、すごく早く充電できるようになっていくと思います。今すぐに蓄電池を買うのはもったいないと思います。

次も同じ動画に対するコメントです。

「今は物価上昇に給与アップが追い付いていないために、施主の予算が相対的に少なくなってきています。工務店さんもよりコスパをよく感じてもらおうと本来必要な仕様や設備を必要最低限のギリギリまで攻めて削って価格を落とそうとするところが増えてくるのではないかと思います。
そうなると、計算違いなどで性能が足りなくなって住み心地が損なわれてしまう家が建ってしまうかもしれません。予算は出すものは出すことと、信頼できる工務店さんとの出会いが重要ですね。」

本当にその通りだと思います。今は物価の上昇に給料アップが追いついていない状態なので、我々のような住宅産業も着工数はものすごく減っています。

前に松尾先生から聞いた話では、大手ハウスメーカーさんの去年の受注は3割ぐらい減ったそうです。単純に住宅受注が減っていることもありますが、それと共に方向転換をしている感じがします。

例えば積水ハウスさんは、群馬県で家を建てるより都市部の賃貸住宅に力を入れていたり、群馬県では老人ホームに力を入れている感じがします。ダイワハウスさんは完全にゼネコンで、住宅よりもビル・商業店舗などを行っています。三井ホームさんはお医者さんとのパイプが強いので、開業医を店舗とセットでやっている感じです。

三井ホームさん・積水ハウスさん・ダイワハウスさんは特色が出ていますが、その他の大きなところはまだ方向性が定まってない感じがします。

また最近、規格住宅が増えてきた感じがします。今まで注文しかやっていなかった会社が規格住宅をやっている感じです。値段を下げるためなので悪いわけではないですが、怖いというか、違和感を感じるところもあります。

家は、建てられる場所に応じた間取り計画・窓の付け方が必要です。そこの部分をなくして規格にしてしまったら、ある程度の影響は出てきます。

ものすごく金額は下がってきているし、こんなに下がるなら多少は性能を落としても仕方がないと考えるのも悪くありません。しかし、それだけしか下がらないの?と思いながらそれを選ぶとなると、50年などの長い目で見た時には、かえって損する感じがします。

前に聞いた話では、ある高性能規格住宅の値段が、なんだかんだで1500万円するそうで、びっくりした経験があります。しかし、都心ではそれでも安いのかなという感じもします。

次は「住宅会社の手違いでアルゴンガスが入っていなかった」という動画です。契約ではアルゴンガスが入っているはずだったのに、実際に工事が始まったら入っていないことがわかって、こういう場合はどうしたらいいですか?という質問をいただいて撮った動画です。

窓ガラス交換は現場でできます。交換の仕方はメルマガで動画を見せました。当社も初めて現場で交換しました。その理由は、最終確認の時に窓ガラスの内側のパッキンが切れていたからです。中までは切れていないから大丈夫かなとも思いましたが、新品なのに欠けているのは嫌だから、メーカーさんに交換を頼みました。

すぐに現場に新しい窓ガラスを持ってきてくれて交換しましたが、すごくシンプルで簡単でした。工場でも同じように作っているので気密性は落ちないと思うし、水密性もあって問題はないと思います。

ただ、今回交換したのはLIXILさんのものですが、たしかYKKさんは、現場で交換できる場合・できない場合があったような気がします。私が確認した限りでは、LIXILさんは全ての窓が現場で交換できるそうです。

動画のようなことが起こったのは、単純にミスという場合もあります。もう1つ考えられるのが、その会社の標準の窓はアルゴンガス入りではないけど、お客さんがアルゴンガスにしてくれと言ったから変更しなくちゃいけなかったのに、そのままオーダーが入ってしまったケースです。

これに対して“nobandさん”からコメントがありました。

「標準の仕様に疑問があって仕様の変更依頼をするよりも、初めから適切と思える仕様を選んでいる工務店を選ぶほうが間違いはない気はします。家は初期性能だけではないですからね。性能の持続まで見越している工務店はある程度限られている感じはします。」

私も本当にそう感じます。あまりこういうことを施工側が言うと、マウントを取るのかと言われそうで困りますが、コストを抑えるために最初の仕様はチープにしておいて、お客さんの予算に応じてグレードアップできる、いろいろ選べるようにすると、窓・断熱・基礎などの性能に関わるところを選んでいく時に間違いが起こりやすいです。

例えば、キッチンをクリナップからトステムに変える、クロス・フローリングの色を変えるならいいと思います。しかし、性能に関わる断熱・気密・通気というところを、お客さんの要望通りに何でもできますという会社は、私は疑問を感じます。

昔松尾先生が言っていましたが、ある時はフランス料理、ある時は寿司、ある時は中華料理、ある時はラーメンを作るという会社に、一流のシェフはおそらくいません。それが全部できる人に悪口を言うわけではないですが、標準的なレベルでしかやりようがないと思います。住宅もそんな感じです。

かといって、それが悪いという意味ではないです。我々から見たらそういう風になるんじゃないかと感じるという話で、良い・悪いという話ではないです。その辺りは、最終的にはみなさんが判断することが大事です。