https://youtu.be/wtwyQylY-zA
今回は質問コーナーです。
ここのところ施工の重要性について解説をさせていただいているので、興味を持つ人は少ないかなという感じはしています。ただ、本質的なところを気にされる人にはウケるかなとも思っています。私がよくメルマガで言う「感情の家づくり」と「理屈の家づくり」というやつですね。理屈も感情も大事なのですが、どちらをベースにして家を作るかによって、選定する工務店も違いますし、作る家も違いますし、失敗や問題が起こる確率も、どちらかの方が高くなるのではないかなという感じがします。
そんな中で、さすらいさんからコメントをいただきました。実務者の方なので、「理屈」というところを大事にされている方です。
「経営者が満足するためだけのマニュアル作成は本当に多いですね。以下は設計事務所での話ですが、業界全体に蔓延している思考でもあります。以前、名古屋の某設計事務所で、性能表示や長期優良、構造計算を行う部署の創設のために、数か月だけ手伝いに出張したことがあります。経営者はとにかくマニュアルを作りまくってくれ、という注文を付けてきました。
私:マニュアルを作ったところで、基本を知らない人が読んでも全く役に立ちません。基本と過去の法改正の変遷や、補助金の要件がどう変わってきたかを理解していないと、クライアントと話はできませんし、信用を得て受注を得ることも難しいです。多種多様な知識が必要なので、マニュアルを作ってそれで仕事が回るなんてことはあり得ません。制度の理解、変遷、法的な理解、そのうえで各業務で必要な技術的な知識とソフトの操作。ハードルはいくつもありますし、それぞれが初心者がマニュアルを読んで進められるほど低いものではないと説明しましたが、理解は得られませんでした。
経営者は、私が使用しているホームズ君の基本ソフト複数、許容応力度計算のオプション1個、省エネEX2個で300万ほど使ったようですが、私がサジを投げた後、更新も保守の契約も止めたようなので、諦めたのだと思います。
これと似たようなことを工務店に置き換えると、詳細図とマニュアルを作りまくれば効率が上がり、初心者でも監督が務まると言った、間違った傾向もあります。」
大手ハウスメーカーの設計担当が基礎断熱の計算をやってもらった際に、「玄関の部分はどうやって吹き付けるんだ!」と監督が怒っていると言ってきたことがありました。普通、こんなことを言いますか? それはお宅の仕事でしょう、計算しかしていませんけど、という話ですよね。ハウスメーカーさんが書いた図面をもらって計算をしているだけで、下請けなのに、「どうやって施工するんだ」ということを私に聞くなよ、という話です。おかしいですよね。別に作り話をしているわけではなく、こういうことが普通に起きているのです。
設計士さんや現場監督さんも、本当にこれは分業制の弊害で、現場経験のない人が設計をしたり、現場経験をするはずの現場監督が現場経験をしなかったりして、すべて施工代理店に投げっぱなしになります。こっちから来たものをこっちに投げっぱなし。写真を撮って送らせて、アルバムを作って、それを施主に渡す。ちゃんとアルバムを作りましたと言うと、「さすが違いますね」と言われる。こんな感じで、みんなで演技をしているようなものです。
根拠なき自信というやつですね。すごく自信たっぷりで、ハウスメーカーさんの家でも、地元の工務店さんの家でも、本当にそう感じます。メルマガでも言いましたが、社名は出せませんけど、透湿防水シートを貼るところに防水シートやルーフィングを貼ってしまうケースがあります。この前も見ました。外壁面なのに、なぜ透湿防水シートを貼らずに屋根用のルーフィングを貼るのか、という感じです。
森下さんたちにも聞いたところ、「昔の職人さんはそういう感覚の人が多かった。なぜかは分からないけど」と言っていました。その会社で発注している職人さんは、昔はこうだったと言って、ずっと同じやり方を続けている。しかも現場監督もおかしいと思わないので、それで済ませてしまっている。でも本来、透湿しなければいけないところを防湿してしまっているわけです。
ましてや上部は、暖かい空気が上昇気流に乗って湿気と一緒に上がっていきます。それをブロックしてしまう。さらに北側に段違い屋根がある場合、ここも外壁面、ここも外壁面です。基本的にはここから排出する通気工法なのですが、間違った施工をする会社は、こういった外壁面にルーフィングを貼ってしまうのです。
仮にこういう家で屋根断熱をした場合、暖房をして加湿をすれば、暖かく湿った空気はずっと上がっていきます。それなのに防水してしまうと、問題が起こりやすくなります。それでもなぜか透湿防水シートではなく、防水シートやルーフィングを貼ってしまう。昔の職人さんのやり方がそのまま残っていて、現場監督もそれを止めないから、その住宅会社では全現場が同じ施工になってしまうのです。
片方は地元でそこそこの棟数をやっているお洒落な会社。もう片方は全国展開している全館空調系の会社。その両方で見ました。その会社も、現場監督がほぼ機能していないのだろうと思います。私は嘘を言っているわけでも、お客さんを増やそうとしているわけでもありません。そもそもその会社で建てるお客さんとうちで建てるお客さんは、考え方が違うと思っていますし、無理に引き寄せようとも思っていません。
高性能住宅を同時に10棟管理するのは無理だとか、プレハブやパネル住宅の注意点という動画の通り、その会社さんでも現場が止まっていると相談がありました。お施主さんから「トラブルが起きて現場が止まっているので見てほしい」と言われましたが、地元で他社さんに意地悪はできないので、メールでアドバイスだけを10回ほど送りました。
現場監督さんは「私だって頑張っているんです!」とキレていたそうで、「毎日11時過ぎまで会社にいる」と言っていたそうです。でも、「一番スキルのない人が押し付けられているポジション」って、まさにこのことだと思います。
育っていないというより、育てる気がない。なるべく簡単に、安く、早くやって、利益だけ最大化しようとするから、こうなる。図面が読めない、施工図も納まり図も工程表も書いたことがない現場監督は一定数います。名刺には現場監督と書いてあるけど、実際は何も分かっていない。その結果、職人さん同士が現場で打ち合わせをすることになります。
お施主さんが来て「思っていたのと違う」と言うと、「それは古い図面です」と言われ、後から「新しい図面を送ります」となる。でもお施主さんは納得できず、「とりあえずやってください」となり、追加費用が発生する。「サービスしてください」と言われる。こういうことも実際にあります。
こういう会社は施工を気にしない分、怖いもの知らずです。インスタ映えはするけど、少し分かっている人が見れば「作れるけど危ない」と思うはずです。
許容応力度計算についても思うところがあります。うちでは専門の構造設計士さんに依頼しています。市販ソフトでやったものと、専門家がやったものでは、見ているポイントがまったく違います。
最近は許容応力度計算がマーケティングに使われるようになってきて、ズレを感じます。高性能住宅も同じで、昔は一部のマニアがやっていたものが一般化し、形だけ真似する人が増えてきた。正直、ちょっと怖いです。
「この業界の一番の癌は人が育っていないことだと思います」。本当にその通りです。設計者や現場監督でも、メーカーのカタログや納まり図を読んでいない人は少なくありません。
職人さんと仲良くなるのは大事ですが、管理者は工務店です。全部OKもダメ、全部NGもダメ。人の感情を考えながら線を引く必要があります。
マニュアルの作り過ぎも問題です。「読め」と言われると受け身になります。本当に一流になりたいなら、業務時間外でも勉強しなければいけない。これはあくまで個人的な意見ですが、そう思います。
餅は餅屋です。自分で全部やるより、得意な人に頼んだ方がいい。私は私の役割をちゃんとやる。それが一番効率がいいと思っています。
いろいろな考え方がありますし、良い・悪いではありません。ただ、住宅業界全体として、どうなのかなとは思います。



