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 | 2023.12.10

①中古住宅を高性能化するのはアリか?②家づくりに100%は無い③工場生産の限界④某大手ハウスメーカーの自画自賛広告

今日は私の配信したYouTube動画にいただいたご質問・コメント紹介していきます。

リフォーム系の動画だったのですが、私もあまり受けないかなと思って配信しています。そもそも私の動画を見る方は新築住宅を建てたい方だと思うので、そこでリフォームを語っても受けないと思います。

ただ、こういうことも発信することは必要なので、動画が伸びる・再生回数が多くなるかどうかは別として、いろんな情報を配信したいと思います。ご興味のある方は見ていただけたらと思います。

元となる動画は「正しいリフォームは新築よりも高い」というタイトルです。今思うと、「正しいリフォーム」ってわかりづらいですよね。もっと簡単に言うと、リノベーションです。

他の動画でもお話ししましたが、リフォームには4ランクぐらいあります。機械を取り替えるだけのリフォームもあれば、化粧直しリフォームもあれば、断熱リフォームという、住み心地の部分をやるリフォームもあります。その一番トップになるのが、リノベーションです。この3つ全てをやるリフォームです。

機械も替え、仕上げも変え、住み心地も変える。さらにリノベーションになると、外観まで変える。ここまでやると最高峰です。ただ、当然ですけどここまでやるとお金はすごく掛かるし、場合によっては新築を建てるより掛かるというのが鉄則です。

他の動画でもお話ししましたが、松尾先生がおっしゃっていたことで、中古住宅を買ってリフォームする手法もあります。今これだけ新築住宅の価格が上がっていると、なかなか新築を建てるのは難しいです。

ですから、程度のいい中古住宅を買って、住み心地をベースに改善することで、新築よりも500万円くらい安く済ませる方法もあります。あれは1つの提言として、ものすごくいいと思います。

ただもしかしたら、そこで勘違いをしちゃう人がいるんじゃないかと思ったんです。程度の良い中古住宅を買ってきて、それを住み心地という部分で改善をして、場合によっては一部クロスや床を張り替えれば、確かに新築を建てるより安いと思います。

ただ、そこでさらに、私たちがやっているようなことを、例えば外壁を全部杉板で貼るとか、デザインまで全部変えていくとか、屋根裏エアコン・床下エアコンを入れて、エアコン1台で家中をコントロールするような世界を求めるとなると、それは当然新築よりも高くなると思います。どう計算しても安くはなりません。そこまでやるとなると、その家をバラバラにしながらやっていくことになりますから。

ただその辺りは、松尾先生もおっしゃっていましたよね。外壁をいじると一気にお金が掛かるので、なるべくそういうところは触らずに、中からの処理だけで済むようにするとか。樹脂窓にするのではなく、内窓をつけてカバーして安くする方法もあります。

そのようなやり方をして、仮に500万円安くなったとします。でも若い方だったら、この先50年くらい住みますよね。年に換算すると、単純計算で10万円安くなることになります。月に直したら8~9千円です。

でも外観は変わらないし、住み心地も完璧と言えるわけでもありません。この辺が本当に悩みどころだと思います。

そして、もしその手法でやるとしたら、都会ではなかなか難しいと思います。都会は中古住宅を買う自体でも費用が高いですから。

田舎だとしても、田舎の中古の家にはあまり良い家がありません。それを買って500万円安くなるけど…と考えると、何が正解かなかなかわかりません。

そういうのも希望であれば、当然やらせていただくことも可能ですし、やってみたいとも思います。ただ、実際にやってみて、住んだ後にどうなのかは私も全くわかりません。

今性能の低いアパートに住んでいるとしたら、体感が良くなるのは事実ですから、そういう考え方もあるかもしれません。しかし、仮にその家に10年ほど住んでから、後悔が出る方もいらっしゃいます。

実際に、過去にそういうお客さんもいらっしゃいました。新築を建てようと思ったけど、お金がもったいないからと新しめの中古住宅を買って10年間住んだ方でした。10年経ってみると不満がかなり出てきてしまったそうです。

それをもう1回売ってそこに新築を建てたいとおっしゃっていましたが、今度は計算的に
難しくなってしまった方もいらっしゃるので、本当に難しいです。

松尾先生も、その辺りは外観などの制約事項を話しています。しかし、人によってはそこを端折る方もいるようです。そこまでよく読み込まないで安易にやってしまうと、本当に失敗してしまいます。

情報を端折らずに、言われていることをしっかりよく見て、しっかり話を理解した上でやらないと、後で困ったことになるケースもありますので、注意した方がいいと思います。

私の動画でも、そういうコメントをいただきました。

動画は「高断熱低気密は危ない」「大手ハウスメーカーで家を建てる理由」などの動画です。このようなコメントをいただきました。

「こんにちは。こんな言葉もあることを最近知りました。「大衆は目に見えるものは何も信じない。自分自身の経験のリアリティを信じないのである。彼らは自分の目と耳を信頼せず、ただ想像力のみを信ずる」ーハンナ・アレント ナチスから逃れてアメリカで教鞭をとった政治哲学家、思想家だそうです。今回の話は究極的には戦争にまで行っちゃいそうなはなしですね。設計や工法も大事だけど最終的には現場の施工で実現できないと!とういことをこれまでの小暮さんの言葉から学びました。」

この話は、先ほどの中古住宅を買ってリフォームするという話に結びつくところもあります。

他の動画でも言いましたが、人間は都合よく考える癖が絶対にあります。自分の都合で考えるとか、自分の好きなこと・わかりやすいことを信じやすいという傾向があります。それが合っていればいいのですが、合っていないと逆の方向に行ってしまいます。

もっと言うと、世の中には100%ということはありませんし、自分が思ったようには進みません。昔から腹八分なんて、80%で満足するのが100%という言葉がありますよね。80%でOKという意味ではないですが、そういう感覚で、100%になったらラッキーぐらいに考えていないと、人生も含めてなかなかうまくいかないのではないかと個人的には思います。

私もお陰様で、毎日一生懸命お仕事させてもらって、家族も元気でいて、親も元気で、子供はちゃんと育ってくれています。私自身もまだ健康で、キャンプに行ったり、酒を飲んだり、焚き火をしたりして遊んでいます。そういうことをやらせていただけるのは、ありがたいことだと思います。

世の中そんなに甘いことはないし、100%なんかあるわけありません。その中で一生懸命頑張る、と考えながら生きていると、気楽に間違った・失敗した、ということはありませんでした。ゆるさも必要じゃないかなと思います。

視野が狭くなっていて、常に100%を目指そうとしていると、苦しいし楽しくもないと思います。言い方は悪いですが、そういう方だと逆に失敗するパターンになりがちじゃないかという感じもします。

私も、下田島モデルハウスで接客していても、すごく神経質な質問ばかりされる人は、なかなか難しい感じがするところもあります。それが良い・悪いは別として、私の方としても楽しくないです。質問も、神経質なことを繰り返して話す人と話をしても、面白くありません。ゆるさがないからではないでしょうか。

自分の気持ちではなく、全てを情報だけで考えて決めようとするのは、アドバイスする方としては楽しくないですよね。もっと言うと、なかなか腹を割って仲良くなれない感じがします。

そもそも商売はお金の授受なんだから、あなたの気持ちなんか関係ない、という商売のやり方もあります。そういう会社さんもいっぱいありますし、ハウスメーカーさんはそういう考え方だと思います。あくまで商売なんだから、好きか嫌いか・作りたいが家かどうかよりも、お客さんが望むものを提供してお金を貰うのが商売、という考えだと思います。

しかし、私みたいに個人事業でやっている人間の感覚だと、商売はお金を得ると共に、面白さがないと長続きしないです。楽しくないとやっている意味がないと思います。厳しさの中には楽しさがないと、職人さんだって楽しくないと思います。こういう感覚が必要なのではないかと思います。

施工も同じだと思います。余裕がない施工は厳しいと思います。悪口っぽく聞こえるかもしれませんが、私が一番感じるのは、建売住宅を作っている大工さんです。見ていて楽しい感じはしません。30日で仕上げる、などの納期の中でひたすらずっとやっている感じです。

ハウスメーカーさんの職人さんも、私はそういう風に見えます。失礼ですが、お客さんから貰っている金額は高いけど、職人さんに出す手間賃は正直すごく安いです。まとめてこれだけ依頼するから安くしろって理屈でやっていますよね。工期も、実際はお客さんから長い工期を貰っているのに、実際に現場に入っている期間は短い、ということもあります。

それで職人さんに「楽しくやれ」と言っても、できないと思います。仕事は切れずにいっぱいあるけど、でも手間賃は安い。写真もそっちで撮ってくれって話ですよね。

あくまで私の感覚ですが、そんな状態で住む人のことを考えた綿密な施工はできないのではないかと、人間的には思います。

工場で生産した自動車なら、ロボットだったら感情なしに作業するからいいと思います。でも住宅は違います。

よくハウスメーカーさんが「工場生産」と言っていますが、工場生産しているのは一部分だけで、現場に持ってきて組み立てている時間の方が多いですよね。2階建ての、工場で作ってきた家をドンと乗せて終わりならいいですが、そんなことは輸送を考えても難しいです。プレハブ住宅だとしても、現場でする作業も多いです。

家は車とは違って、生身の人間がそこで生活するものです。建てる場所によって、日射から何から違います。周りの環境も、日の当たり方・風の当たり方も違います。それを加味して人間が何十年間も住むスペース・空間を作るとなると、工場で自動車みたいに作れるものではないですよね。

自動車は移動する物体です。家族全員で60年も住む空間ではありません。それと同じに家を捉えるのはおかしいと思います。

この辺りも、メルマガで皮肉を言いましたよね。日本一大きい自動車メーカーの名前がついた会社についてです。その会社とは資本提携はないですが、○○○ホームという名前です。

「○○○という名の信頼に住まう」というキャッチコピーの工事看板を揚げているのを見ました。全く意味がわからなかったです。失礼ですが、自画自賛もすごいだろうと思いました。

この名前の会社は世界で一番大きい自動車会社です。2027年から、全固体電池を使ってEV革命を起こすとか、最先端のことをお金掛けてやっていて、世界基準ですごいと思います。

車自体のクオリティーも良いし、デザインも、日本の自動車メーカーの中では一番優れている会社だと思います。アンチの方の中では「内装が安っぽい」などと言われていますが、限られたコストの中でよくやっていると思います。金額と性能のバランスはものすごくいいし、世界基準で物を作っていて、製造方法もすごいです。

その会社の名前を引っ張り出して「○○○という名前の信頼に住まう」というキャッチコピーを掲げていました。しかし、その会社の家は普通の木造で、屋根はコロニアルで、外壁はサイディングです。

皮肉っぽいことをかなり言っていますが、こういうことを言っている限りダメだと思います。
かたや世界基準で全固体電池までやっているような会社ですが、家は普通の木造住宅で、普通のグラスウールを使って、窓はアルミ樹脂窓、屋根はコロニアル、外壁はサイディング。やっているレベルが全然違います。なぜこれを持ってきてしまうのかと思います。

言うのは自由ですが、こういうものを見ると、恥ずかしくないのかなと思ってしまいます。自画自賛もすごいという感じです。これでお客さんを騙して売ってしまうのか、という風に見えませんか?

こんなこと言うとまたいろいろと書かれそうですが、こういうことはやめた方がいいと思います。それだったら、ちゃんと現場施工した方がいいと思います。ちゃんとしたいい間取りの家を作って、職人さんにちゃんと手間賃を払う。家は安くないんですから。

これが、さっき言った「大衆は目に見えるものは何も信じない」という話とリンクするんです。自動車メーカーの名前を見て、「あの自動車会社さんの関連企業だったら」と思って勝手に一緒に考えてしまうような感じです。

その自動車会社さんとこの会社は、資本提携も全くないですし、違う会社です。ただ名前が一緒なだけです。例えば小暮ホーム・小暮ハウス・小暮アットホームという会社がそれぞれある、というような話です。「小暮」という名前は同じでも、そこで技術共有があるわけではありません。

先日現場を回りながらこの看板を見た時に、がっくりしたというか、こういうことはそろそろやめてくださいと、メーカーさんももう少し本質に行きましょう、と感じました。