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 | 2023.06.08

杉板を張らない方が良い条件

今日は杉板について解説をしたいと思います。

メルマガやYouTubeでも話したことがあるかもしれませんが、当社の家の外観仕上げは一応これというものを決めています。特に、屋根についてはガルバリウム鋼板のシルバー1択です。

なぜかというと、シルバーは色褪せしにくいし、熱の反射もしてくれます。また、ガルバリウム鋼板を1枚葺きの縦ハゼ葺きで施工すると、太陽光発電を載せやすくなるんです。そして雨漏りもしづらい工法なので、色の問題、熱の問題、雨漏りの問題、太陽光発電の問題を考えると、屋根にはガルバリウム鋼板のシルバー1択です。

外壁については、ガルバリウム鋼板、塗り壁、杉板の3つから選んでいます。サイディングやタイルは基本的に使っていません。玄関などにアクセントとしてタイルを使うのは良いと思いますが、全面タイルはちょっと怖いので避けています(依頼されたこともありません)。これが当社の外観仕上げの基本的な考え方です。

ただし外壁については、塗り壁と杉板には注意点があるんです。ガルバリウム鋼板はオールマイティなので問題ないのですが、塗り壁・杉板はシチュエーション・建てる場所によっては被害が出る可能性があります。特に杉板は腐る可能性があり、塗り壁は苔が生えやすいです。

「お客さんの場所だと杉板は止めた方がいいんじゃないですか」とか、貼ったとしても「こっち側はいいけどこっち側は止めた方がいいと思いますよ」と言う場合もあります。

その原因は何かと言うと、木材が腐る原因となる腐朽菌です。みなさんがよく知っているカビとは全く別の話です。カビは木材の表面の栄養分を食べて広がりますが、材木自体を弱くするわけではありません。

私が相談を受けたことがあるケースでは、高気密・高断熱の家で基礎断熱をしていて、床下にカビが生えてしまったケースもありました。ただし、カビが生えてしまったからと言って、すぐに問題があるわけではないので、ご安心ください。そういう時の対処法としては、高濃度のアルコールを噴射してカビ菌を殺したり、ペーパーで削ったりする方法もあります。

一番良いのはそういう状況にならないことです。でも、万が一カビが生えてしまった場合でも、対処法はあるので心配しないでください。ただし、カビと腐朽菌は全く別物なので、それは頭に入れておいてくださいね。

以前うちのお客さんが、とある工務店の営業マンさんに「どんな家を作りたいんですか?」と聞かれたから、「私は杉板を張ったような家がいいと思っています」と伝えたところ、「そんなことをやったら、10年で家がボロボロになりますよ」と言われたらしいです。

それは一理ありますね、作り方によっては。でも、ちゃんと軒を出して、木が乾きやすいように通気を確保すれば、家がボロボロになることはないんです。私の家もそうですし、私よりもずっと前に家を建てた先輩たちの家もそうです。通気さえすれば、シロアリに食べられることもないし、勝手に腐ることもありません。

話を戻しますが、腐朽菌が発生するのは、水と温度がある状況です。水に濡れて、なかなか乾かない、そして暖かい場所。そういう場所に杉板を張ると、腐朽菌が増えて木が腐ってしまう可能性があるんです。ですから、そういう状況になりやすい場所では杉板を張らない方がいいですね。

具体的に言うと、日が当たりにくい場所です。日が当たれば水は飛びますから、日が当たりにくい場所は木が水分を持ちやすくなります。北側、西側、東側でも前に家が建っていると乾きにくいですよね。南側でも、近くに建物があって日が当たらない場所なら、杉板も乾きにくい。つまり、杉板が水を含んだときに乾きにくい場所や面は、杉板を使うのは避けた方がいいです。

次に温度について。南側だと日当たりが悪くても、太陽光は上から来るのでそこそこ温度が上がります。でも、北側や冬の東側は太陽がすぐに移動してしまうから乾きにくいですよね。そういうことを考えると、北側は一番リスクが高いかもしれません。風通しが悪く、水分が飛びにくく、ジメジメしやすい場所だと、木が腐る可能性が高くなります。

私が以前、止めた方がいいとお伝えしたのは、こんなシチュエーションでした。想像してみてください。家の後ろに山があり、山麓で家を建てようとするシチュエーション。山では雨が降りますよね。水は自然と高いところから低いところへ流れるわけです。さらに、その土地に小さな堀や川があると、降り積もった雨水がすべてそこに集まってしまいます。

するとその地域は、湿った、ジュクジュクとした状態になりますよね。このシチュエーションで、杉板を使って壁を張ったとします。そうすると、杉板がその水分を吸ってしまうんです。それに、太陽の光があまり当たらない。山の方が太陽を受けて、その温度上昇で水分がモワーンと湿気となってやってくる。杉板はそれをどんどん吸収します。この状況、良くはないですよね。

でも、私が詳しく説明しなくても、みなさんなら、自分の家を建てたい場所に行って、周りの環境を見れば、季節感も感じて、なんとなくイメージが湧くと思います。そのイメージを踏まえて、家づくりの仕上げを考えるというのは、非常に簡単な方法です。ただ、難しさもあります。

本当は難しいことではないのですが、実際に間取りの打ち合わせをしていくと、例えば「(デザイン的に)こっち側にこんな仕上げがしたい」となります。先ほどのケースで言えば、杉板ではなく、塗り壁でも同様に問題があるかもしれません。その時はガルバリウム鋼板が最適です。しかしお客さんによっては、全面塗り壁が良いと思う方もいるでしょう。

他の場合として、例えば家の北側が道路で、南側には田んぼや川がある環境を考えてみましょう。そこでは非常に水分が上がりやすくなります。そして、北側がメインとなる家だと、塗り壁でオシャレにしたり、何かアクセントを付けたいと思うこともありますよね。しかしその壁が水分を含むと、カビが生える可能性があります。

実際に、私の近くの家でも、本当に藻だらけになっている家があります。あるいは、白い石灰の壁がきれいな家でも、日当たりの悪い場所では水分を含んでしまって、黒い涙のような痕跡ができてしまっている家もあります。

だからこそ、お客さん自身が、自分で見て考えることが大切だと思います。どんな仕上げにしたいか、どこに杉板を張りたいか、そんな視点で物事を見ることも大切だと思います。

失礼ながら言わせてもらいますけど、住宅会社さんの中には、あまり現場の環境に目を向けず、図面やパースで家の見え方に一生懸命になっている方がたくさんいます。特に、オシャレな家を作る会社さんは、そういった部分に大きな力を注いでいて、画面上では美しい家を作れるし、図面もカラーパースできちんと作れる。それはわかるんですけど、現場に行ってみないとわからないこともたくさんあります。

例えば、現場の特性を把握しなければ、後々問題になるケースがあるんです。現場に行くことなく、画面上や図面だけで決定した設計は、最終的には消費者さんが不利益を被ることになる。これも含めて、きちんと考えていくべきだと思います。

私も最近そういうケースをちょこちょこ見ています。たとえば、この屋根の納まり方は厳しいな、とか。これについては次回のメルマガに書くつもりですが、うちのモデルハウスの近くに建売住宅が最近たくさん建っています。

今までの建売と言えば、埼玉県とか栃木県のローコスト建売住宅ビルダーさんが来て、バンバン建てていたんですけど、最近は大手ハウスメーカーまで建売に力を入れています。それもうちのモデルハウスの周りのような、群馬県の田舎で、同時に8棟もの建売を作っているんですよ。

その間取りを見たとき、正直「これは…」と感じました。群馬県は風が強く吹く場所で、その風向きを無視した玄関の位置、暑い地域にも関わらず日射取得が考えられていない窓配置など、買う方が地元の方でなければ、こんなことは分からないでしょう。

実際に冬になって、バーッと北風が赤城山から吹いてきてホコリが舞った時、玄関を開けたらどうなるのかとか、暑い太田市ではどうなるのか。大手ハウスメーカーの建売住宅なら、注文住宅よりは安いかもしれません。しかし、そういったことを考慮されていないのは、もったいないなと思います。

いずれにしても、みなさんせっかく作る家ですから、そういうものを含めて考えていただければと思います。ぜひ参考にしてください。